小説版『暴れん坊プリンセス』について、著者の細江ひろみさんと、桝田省治氏から、紹介のコメントです。




★予告★ BY細江ひろみさん


この国の平和は、あたしが守る!
やめろと言われても、守っちゃう!

女王様の尻にしかれたドラゴンと、
銀山だけで成り立ってる、
平和な小国シルバーベル。

ある日突然、女王様が呪いを受けて、
急遽 幼いお姫様が、
女王のドラゴンを受け継ぐことに!

やってみたものの、
姫様とドラゴンは寝込んでしまう。
時を同じくして、銀が枯渇し大不況!
虎視眈々と領土を狙う近隣諸国!
不正と魔物がはびこった!

そしてついに、病弱なお姫様が立ち上がる!

暴れん坊プリンセス第一巻

 『プリンセス・ルージュの、華麗なデビュー!』
 ふろく『アッシュ放浪記』

ただいま開演、お楽しみに!

★なんか、かわいらしい紹介。

ルージュは、オテンバな七歳の、この国唯一のプリンセス。
お仕着せのご学友に飽き足らず、ある日自分で友だちを見つけようと、お城を抜け出 します。
そこで出会ったのは、騎士養成学校の、シオンとアッシュ、同じく七歳。
三人はあっというまに仲良くなり、遊び始めるのですが、そのせいでシオンとアッ シュは退学の憂き目に!
……ルージュは、友だちを手に入れられるのでしょうか?!

★なんか、シリアスな紹介。

シルバーベル王国のヴィクトワール王家の女王は、代々竜の力を継承し、その力でもって国を護ってきた。
しかし、ある日突然女王は呪われてしまう。
竜の力を失えば、シルバーベルはたちまち周囲の国に侵略されてしまうだろう。 しかし、力を継承できるのは、まだ幼い王女ルージュのみ。
ルージュは気丈にも、竜の力を継ぐことを決心するのであった。

★なんか、教訓的な紹介。

あるところに、めいっぱいワガママなお姫様がおったそうな。
それでも、そんなお姫様を好きになった男の子が二人もいたそうな。
二人はいつも、お姫様に振り回されておったが、それでも姫様のことが、好きだったそうな。
たで喰う虫も好きずき、ということじゃ。




★暴れん坊プリンセス2巻解説より★ BY桝田省治氏


ずは自己紹介から。  
この小説はプレイステーション2の同名ゲームソフトを元に書かれている。  
僕はそのゲームのシナリオライター。つまり原作者で本書の監修担当、桝田省治である。  

いにくいことは最初に言ってしまうのが僕の主義だ。  
『ゲームを原作にした小説の多くは、読む価値がない駄作である!』  
だいたいこの類いの小説は、人気があるゲームの関連グッズのひとつとして発売される。ようするに中身も確かめずに買う、向こう見ずなファンを当て込んだ急造品だ。ゲームメーカーからの的外れでくだらない制約も多い。  
著者もそれを承知で書く。当然、面白さは二の次だ。  
だが安心してくれ。本書は数少ない例外中の例外である。  

と自信たっぷりに書いておいてナンだが、関係者の賛辞ほど信用できないものはない(笑)。ここはひとつ、自分の目で確かめてほしい。  

れん坊プリンセスをひと言で表せば“少女版の水戸黄門”。実にわかりやすく、 かつアホらしいコンセプトだ。  
おっと! 
少女版の水戸黄門と聞いて書棚に戻そうとした、立ち読み中のアナタ。 しばし、しばし待たれい。確かに、少女版の水戸黄門じゃ軽く見える。  
がしかし、この小説の内容は…  
やっぱり軽い(笑)。ま、冗談はこれくらいにしておこう。  

直言えば僕自身、このネタを思いついた時点では時代劇のパロディ程度に軽く考えていた。が、いざプロットを起こす段になって、世直しヒーローを女の子に変えただけでは文字通りお話しにならないことに気づいた。  
思い出してほしい。水戸黄門、遠山の金さん、暴れん坊将軍。歴代のヒーローたちを。  
彼らに共通するのは、庶民のために社会悪を身分を隠し、自ら排除に乗り出す点 だ。これを彼らは世直しと称する。  
だが冷静に考えてくれ。真剣に世の情勢を憂いて、彼らほどの地位と権力があるなら、他に取るべき手立てがあるはずなのだ。にもかかわらず彼らがやるのは、いつも世直しのみだ。  
実のところ彼らの正義は、たまたま目に付いたほころびを繕って回る、醜悪な自己満足に過ぎない。どこかの国の官僚と同じく、抜本的な構造改革など毛の先ほども考えてはいない。裏を返せば、彼らこそ矛盾の根源である体制側のシンボルだ。  

て少女である。  

の口から発せられる「か〜わいい☆」に代表される言霊は、理屈より感性が優先する。この“絶対”評価は、すべての既成の価値観を根底から危うくする。  
さらに攻撃の矢は的を選ばない。自分の存在価値にさえ容赦がない。時に平然と自身を否定してしまうほどに純粋だ。おそらく彼女たちにとって創造と破壊に明確な区別はない。保身に忙しい体制側とは対極にある。  

れが少女。本書の主人公、暴れん坊プリンセス。小国シルバーベルの次期女王ルージュ姫である。  
彼女の右腕には青竜の刺青がある。実はこの刺青、生きている。  
しかもひとたび解き放たれれば、一瞬で一国を滅ぼすパワーを秘めている。この核の抑止力ならぬ竜の抑止力を頼みに、シルバーベルは他国の侵略を受けることもなく、二百年間、生き延びてきたのだ。  
そんな重要なそして危険な力であるから、代々の女王は物心がつく年齢から訓練を受け、成人後に竜を継承する。これが慣わしであった。  
ところが我らが暴れん坊プリンセスは、とある事情により十分な訓練を受けていない。パワーのコントロールもままならない。

う一度確認しておく。彼女は箸が転がるだけで笑い、枯れ葉が散るたび涙をこぼす。情緒の安定など期待してはいけない。暴走の危機は常にすぐそこにある。
つまりは“普通の”少女なのだ。

事。
平成十二年に家族が増えた。桝田家待望の娘である。  
干支は辰。僕の勝手な想像では、縁起がよいとされる竜の力を宿す女の子であり、 もちろん我が家の暴れん坊プリンセスだ。  
彼女の誕生がこの物語を書くきっかけのひとつになった。それは確かだ。  
僕も人の親だ。嬉しかった。が、その喜びと同じくらいの不安も感じた。  
四十歳で授かった子である。彼女が成人を迎える年、僕は六十だ。おそらく僕には娘を守ってやれる力はない。あったとしても残りわずかだろう。  
加えて昨今、解決の見通しが立たない、さまざまな社会問題がやたらと目につく。  
不景気、差別、原発、異常気象、エイズ、汚染…。正直言ってちょっと気分が暗く なった。
しかし落ち込んでいてもしょうがない。僕が死んだ後もこの環境の中で、娘は生き ていくしかない。だから僕は無責任を承知で「頑張れ!」と言うしかない。  
僕が彼女に望むのはひとつ。どんな状況下でも理不尽なことには常に臨戦態勢。  
何者にも臆することのない強い気構えと、理屈はこの際いらないから明日への希望もずっと持ち続けてほしい。そんな気持ちを込めて本作を書いた。娘に送るエールのつもりだ。  

からと言ってだ。「で、具体的にはどんな教育をされるつもりですか?」などと 突っ込まないでもらいたい。そんなことがわかれば苦労はしない。  
暴れん坊プリンセスは三巻で終わる。最後は今どき珍しい大団円だ。が、先に断っておくと、ためになりそうな結論は出ていない。  

者の細江さんも僕の娘と同じくらいのお子さんを育てている。
現役のママさん だ。毎日が子供との戦争である。実生活で理想的教育なんぞイチイチ考えいる暇はない。  
そんなふたりの作品だ。すべてが解決するわけがない。無責任だと思う。が、その迷走ぶりをむしろ楽しんでほしい。  
それこそが僕らの、そしておそらくはアナタの、今現在のリアリティなのだ。  

江さんの名前が出たので、次は小説の中身について。  
僕は女性との共同作業が好きだ。男である僕にはない視点がたいてい発見できる。 それが楽しい。この小説の仕事も刺激的だった。  
ゲームと小説ではそのメディア特性が異なる。面白さの質が違うと言い換えてもい い。  
たとえばゲームは、プレイヤーが操作するシオンという十八歳の男性の視点で終始する。対してこの小説は三人称だ。  
結果として何が変わったか。ゲームでは想像するしかなかった、他のキャラクター の内面が書き足されたのである。もちろんその部分は細江さんの完全オリジナルだ。  
これは原作者である僕にとって大事件だった。毎週送られてくる原稿を読むたびドキドキしたのを覚えている。  
「そうか! そんなことを考えていたのか。ふ〜、今日まで気づかなかったゼ」と 感心したものだ(笑)。  
たとえるなら、堅物だと思っていた幼なじみの親友が、ひとり四条河原町でギター をかき鳴らし「レット・イット・ビ〜♪」と歌っているのを偶然に目撃した(実話)。それくらいの衝撃だった。  
だからと言って、友情にヒビが入ったりはしない。むしろ意外な面を知って以前よ り付き合いやすくなった気がした。今回もそうだ。僕の側のそういう変化も含めて、 細江さんの書く暴れん坊プリンセスは驚きの連続だった。  

でも興味深かったのは女性キャラの心理描写だ。特に一巻の成人式、ルージュ姫の暴走。あのシーンの( )の中身だ。  
肉体は半ば魔物に変じ、口から出る言葉は狂暴そのもの。なのに、それとは対照的に( )内に書かれたルージュ姫の内面は意外なまでに冷静。むしろ平穏な日常感さえ漂っていた。  
あのギャップには心底ゾクゾクさせられた。男が気軽に覗いてはいけない種類の、 何か赤黒い濡れた物で、それは描かれていた。  
自分の心や体の変化を不快に思う。同時に快感にも感じる。全男性がそうだとは言 わないが、少なくとも僕の生理にはあんな複雑さは見当たらない。性差を強烈に意識したという意味で、実にエロチックだった。  

なみにゲームにも同じ場面がある。ルージュ姫の声は三石琴乃さんだ。  
こちらは琴乃さんのタガの外れたハイテンションな演技。城の派手な爆発。緊張感あふれる音楽。三者があいまって、かなりの迫力だ。比較するとメディアによる演出の違いがよくわかる。  

はついで。もう少し小説とゲームの違いを書いておく。  
ゲーム中では詳しく語られていないエピソードを、小説の各巻にひとつずつ外伝と して収録した。
一巻にはアッシュの傭兵時代。二巻にはトゥーリアでのフィルの活躍 が入っている。(三巻はナイショ)  
外伝に関しては細江さんにたいへん迷惑をかけた。僕のディレクションがつたないせいだ。彼女は細かい注文に応えて何度も何度もていねいに書き直してくれた。心から感謝している。  
その苦労あって、外伝はゲームを先にやった人にとって、これ以上ないサービスに仕上がったと自負している。  
逆に本書を先に読んだ方には、ゲームで手に汗握る戦闘を楽しんでもらいたい。  
説に登場する魔物は悲しいくらいに弱い。正義の味方チームは連戦連勝。描写もコミカルだ。が、ゲームの魔物は趣が異なる。相当に手ごわい。  
それに何より違うのは、ゲームのシオンはアナタ自身だ。  
作戦部長の采配がいかに重要か。いつもにこやかな彼のストレスが実はいかに深刻なものか(笑)。体験してみるのも面白いはずだ。

ームの最後に予告編を三つほど入れておいた。もちろんシャレだ。制作の予定は今のところない。ゲームの開発は期間も予算も大きい。そう簡単には決まらない。そ れに続編を作るにしても一度にひとつだ。  

こで読者の皆さんに提案がある。ゲームをプレイし予告編を見たら、角川書店と細江さんに熱い手紙を送ってくれ。  
小説の制作規模はゲームに比べれば小さい。採算ラインも低い。逆に言えば続編の実現性ははるかに高い。  
ルージュたちの次なる冒険の舞台を決めるのは、たぶんアナタの清き一票だ!


二〇〇一年八月二十六日現在、  
ゲームのほうは未だマスターアップに四苦八苦している。
桝田省治





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