ふみこは派手に床を踏み鳴らした。
何千tもの重さが打ち付けられたような音が響く。
「我は王の悲しみを和らげるために鍛えられし一振りの剣、ただの人より現れて、歌を教えられし一人の魔女!」
ふみこは堂々とガンプ・オーマの戦いの口上を告げた。それは偉大なる原初の魔術であった。
「我は招聘する精霊の力!我は号する天空を砕く人の拳!」
ふみこの右腕が青い残像を残して輝いた。
青い輝きが拳に集まる。
足元が巨大な重圧で潰れ、クレーターを作る。
「我が拳は天の涙!」
ふみこは輝く拳を突き出した。
「我が拳は天の悲しみ!」
そして優しく拳を顔に引き寄せた。
編んでいた髪が解け、伏せたふみこの顔を隠した。
顔をあげ、絶大な力とともに飛翔する。青い輝きが翼になる。
「勅命によりて我は力の代行者として魔術を使役する! 完成せよ 精霊手!」
「異世界の魔術か!」
ただ一撃で武者ゴーレムの肩を打ち砕き、ふみこは告げた。
「本当の世界の力よ。遠い昔に砕け散り、今、新しい世界のために使われる力よ」
右腕に宿る何億もの青い輝きが吠えた。光が乱舞し、プロミネンスをあげる。
精霊は新しい世界を望んでいた。神々も魔術もない明日を。
そして精霊手はゴーレムの剣を叩き折る。
「私は一人の女として、あの少年が作る新しい世界を見てみたい。そのために魔術が滅んでも、だから、どうしたと思っている。貴方なら分かるでしょう?愛ってそういうものよ」
そういうと、ふみこはその輝く拳で武者ゴーレムとバウマンを粉々にした。
なんの迷いも、恐れもなかった。
「楽しみなのよ。明日が。私は今、醜く老いさばらえたいと思っている」 |