エンディング
小村 佳々子は、窓際に座って、窓の外を眺めている水の巫女の横顔を見て、ため息をついて、一度天井を見て、自分は損だなぁ と思った。
これからしようとすることに、胸が、ちくんと痛んだ。
優しく笑って、水の巫女を見る。
「ひどい男ですね。その人。」
「…あの人を悪く言わないで!」
「だって、捨てたんでしょう?」
「捨てられてなんか…いません。ただ…」
「ただ?」
「…いなくなっただけで。」
「やっぱり、同じですよ。今ごろ、誰と仲良くなっているんだか。」
「違います。」
「確かめてもいないのに?」
「うっ…」
「…困っているかも知れませんよね。どこかでお腹をすかせているかも。」
泣きそうな、うらめしそうな顔で水の巫女は佳々子を見た。
佳々子は胸の奥の痛みを笑って隠した。
「…それからゼンゼン関係ないんですけど、私、旅行に行くんです。ほら、腕が青く光っているでしょう。これは前兆。」
水の巫女は、顔をあげた。
「これと同じタイプの人なんでしょう。だったら、その人にも会えるかもね。」
水の巫女は、息を止めた後、声を震わせた。
「本当、ですか。」
「さあ、実際どうかは分かりませんけどね。」
「つ、連れて行ってください、どうしても、どうしても会いたいんです。あの人に。」
「後悔、しませんか?」
後悔しているほうは私よね。 佳々子は微笑んだ。水の巫女が嬉しそうな表情を浮かべる。
「はいっ。」
佳々子は手をさし伸ばした。
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