アルファサーガを読む皆さんの中には、TRPGをそれまで知らない人、あるいは知っていてもはっきり分らない人がいるかもしれません。
この文章は、そういった人のために書かれました。
ベテランの人には眠い文章になるかもしれません。その場合は読み飛ばして次の章へ進んでください。
この文章を読むことで、TRPGというゲームジャンルが少しは分るようになり、それなりに迷わず勘所を掴んで遊べるようになります。
(全部が分るわけでもなく、全てがうまくいくという訳はないです。念のため。でもまあ、知らないではじめるよりは、きっといい結果を残すでしょう。)
なお、TRPGとは何かというテーマに関しては、これまでにも色々な諸先輩方、あるいは碩学の方がそれぞれ意見を述べられています。そのどれが正解で、どこがいいとか、そういうことはこの文章では言及しません。 なぜなら正確に言えばこれから述べる私の意見も含め、どれも一部は正解で、一部は間違っていると思うゆえです。 ゲームは進歩していますし、ゲームデザイナーも同じです。過去の完全な解説は今見るととんちんかんで、その逆もあります。この文章は今日の正解ですが、明日はどうかわかりません。
だからこの文章は、現在のところ(第7世界時間2004年12月)のゲームデザイナーである芝村裕吏の見解として読んでいただければ幸いです。
でもまあ、それなりに役には立つと思うのです。
なにはともあれ、いままでずっと、遊んできたので。
TRPGとはテーブルトークロールプレイングゲームといい、辞書的には会話進行型ロールプレイングゲームとされます。 ロールプレイとは役割を演じるの意味ですから、TRPGとは会話で進行する、役割を演じるゲームです。
効用でTRPGとはなにかを説明すると、物語をみんな(参加者全員)で作って行くものです。もちろん、同じ作るのであれば”良い”物語であるほうが良いとされています。
現象としてTRPGとは何かを説明すると、何人かの参加者(これをプレイヤーと言います)が車座になって、紙と鉛筆、それにサイコロ、フィギアなどの小道具を使って、人間同士の会話によって進行させて行くゲームです。
ゲームマスターと呼ばれる進行役が、<シナリオ>というデータを元に状況を説明し、プレイヤー達の質疑応答に答え、行動宣言を聞いたら判定処理を行います。
プレイヤーはゲームマスターから情報を聞き取り、行動宣言を行うことでゲームを進行させていきます。
図にするとこうです。
TRPGのゲーム進行(一連の流れ)
- ゲームマスターと呼ばれる進行役が、<シナリオ>をもとに状況を説明する。
- プレイヤー達がゲームマスターに対して状況を確認するために質問する。
- ゲームマスターが質問に答える。(進行が遅いようならこれ以上の質問を打ち切る)
- プレイヤーは行動宣言する。
- ゲームマスターが<ルール>に沿って行動宣言を判定し、状況を変更/修正する。
- 1に戻る。
以上の感じです。実際のゲームでは一人のゲームマスターが複数のプレイヤーを相手にする関係上、1から6は入り乱れます。あるプレイヤーでは1、あるプレイヤーでは3というわけです。
が、それでは初心者にあまりに不親切。ということでAの魔法陣ではこれを厳密に手順化してあります。
<シナリオ>とは世間一般で言う脚本とは異なり、ゲームマスターが作成した、ゲームの舞台や状況を記したデータの集合体のことです。 Aの魔法陣では世間一般での脚本と混同するのを避けるためにセッションデータと呼びます。
<ルール>とはルールブックに記述されているルールを言います。このAの魔法陣であれば、アルファサーガの巻末にある内容のことを言います。
ゲームマスターを、このゲームではセッションデザイナーと呼びます。
実は統計的に見て、TRPGで一番プレイヤーを困らせているのは、この部分、つまり参加者が『何が目的で何をもって勝ちとするのか』の部分です。
最終的な目的は、”良い”物語をみんな(参加者全員)で作って行くというのはいいとしても、それが具体的にどんなものなのか、どうすればいいのか、多くのルールブックにおいて説明がない、あるいはあっても気づくのが難しいくらいさらりと書いてあるのが実情です。
が、それでは初心者にあまりに不親切。ということでAの魔法陣ではこれをゲームごとに明確化するようにしてあります。
TRPGとは、キット(半完成品)のゲームであり、ゲームマスターに、ちょっとしたゲームデザイナー気分(苦労と面白さ)を提供します。
だれだってゲームを作りたいと思うことはあるでしょう。自分の作ったゲームで人を喜ばせたいと思うことはあるでしょう。この製品はそういう方の願いをかなえるために存在します。
その一方で、TRPGはゲームマスターの友人であろう参加者…プレイヤー達の要望をもっとも知った上で、ゲームマスターが貴方がたのために作った専用のゲームでもあります。
だれだって自分専用の、自分の要望をきっちり形にした、あるいは可能な限りそれに近いゲームを遊んでみたいと思うことはあるでしょう。この製品はその貴方の願いをかなえるために存在します。
キット(半完成品)であるがために、なんでも自由に出来るとは言えませんが、それでも、TRPGというゲームは、完成品として出荷されるゲームよりも、あるいは万単位でしかお客を見ることが出来ない(マス)ゲームデザイナーよりも、誰よりも貴方がたに向いたゲームになる可能性があります。そういう風になるよう、作ることが出来るのです。
プレイヤーとゲームマスター達がはっきり意思表示し、こんなゲームがやりたいと話しながら、夢を現実にしていきましょう。そして、遊んでみましょう。TRPGとは、手作りの暖かさ、会話で進めるお手軽さ、顔が見える緊張感とそこでの協調から成り立つ、貴方がただけのゲームを作るとてもエキサイティングで愉快な遊びです。
本当になにも知らないでTRPGを遊び始める人が多くの場合でひっかかるのはゲームマスター(Aの魔法陣ではセッションデザイナー、SD)が多くの場合でやらなければならないシナリオ作成(Aの魔法陣ではセッションデータの作成)です。
手間の点でTRPGはかなりプレイヤー間に不公平があり、ゲームマスター(Aの魔法陣ではセッションデザイナー、SD)は他のプレイヤーと比較してかなりの作業負荷がかかります。この部分の説明や注意はあまりなされていないのが現状です。
普通、TPPGというものは、(ボードゲーム版の)RPGツクールみたいなものだと認識すると大変分りやすいでしょう。ゲームマスターが作ったゲームを他のプレイヤーに遊んでもらうことでTRPGというものは成立しています。
RPGツクールをRPGとは言わないように、Aの魔法陣でもそれ自体を指してTRPGとは呼んでいません。TRPGキットと呼んでいます。
他のゲームよりは取り扱いが楽であるにせよ、ゲームマスター(Aの魔法陣ではセッションデザイナー、SD)が作ったゲームを他のプレイヤーに遊んでもらうことが前提であることを簡潔に解説するために、Aの魔法陣ではルールブックを含むアルファサーガをキット(半完成品)と呼んでいるわけです。
アルファサーガにもサンプルセッションデータは付属していますが、それだけで延々と遊ぶことは出来ません。