バヌキと神経衰弱

96/03/11 桝田省治


 少し前から一部で深刻な問題の「ババヌキと神経衰弱」の関係について、種明かしをしておきます。
【1】カードの階層と分類
 トランプの特性には以下の階層と分類があります。

表と裏の2識別が可能。
裏は識別不能
表は赤と黒の2分類別が可能。
表はマークにより4分類が可能。
表は絵札とそれ以外の札に2分類が可能。
表は13種の別系統の記号(数字)により13分類が可能。
表の13種の数字は大小の比較が可能。
表の13種の数字は各々1の差がある。
表の13種の数字は1〜13である。
表の4(マーク)×13(数字)は52分類が可能。
 他にも上下の区別が可能か否かの2分類等もありますが、まあこんなところです。
 これはカードを人間に例えると、性別や人種や年令等のようなものです。
【2】カードの状態
 トランプゲームには大別して、手札、山札、場札、捨て札のカードの状態があります。これはプレイ中のカードの住所に当たります。
【3】ゲームの構成要素
 全てのトランプのゲームは、【1】のカードの識別情報のいくつかを利用します。
 そしてプレイの前→中→後の【2】のカードの状態変化によって成り立ちます。
 高度な戦略性があるゲームほど【1】も【2】の要素も多く複雑化します。つまり「個性的なヤツらが動きまわるほうが面白い」ってわけです。

 さて、やっと本題です。試みにババヌキと神経衰弱を考えてみましょう。

 まずババヌキです。
 プレイ開始時のカードの状態は「裏向き」の手札です。カードを1枚ずつ交換し『同じ記号(数字)が揃う』と捨て札として手札より取り去ります。
 勝利条件は他のプレイヤーより早く手札を全て捨て札に変えることです。

 次に神経衰弱です。
 プレイ開始時のカードの状態は『裏向き』の場札です。カードを2枚ずつめくり『同じ記号(数字)が揃う』と場札から手札として取り去ります。
 勝利条件は場札が全て手札に変化した時、他のプレイヤーより手札が多いことです。

 上記の比較からババヌキと神経衰弱は、状態変化の過程の逆転と、それにともなう勝利条件の変更を除けば、ほぼ同じ構造、あるいは位相と言えます。
 つまり乱暴な言い方をすると、ババヌキというのは、神経衰弱で場に並んでいるカードをプレイヤー全員に等分してスタートするゲームというわけです。
 もちろん構造が同じでも楽しさが同じとは限りません。
 異なる楽しさがあるからこそ、ババヌキも神経衰弱も廃れないわけです。

 僕は新しいゲームのデザイン方法論の1つとして、この点に注目しています。
Alfa・MARS PROJECT