算式と格闘する日々

96/03/20 桝田省治


 ここ数日、戦闘関係の計算式と格闘しています。
 戦闘の計算式で最も使用頻度が高いのは、RPGでは言うまでもなく普通に「攻撃」を選んだ時のダメージ算出式です。
 アアアアの攻撃!
 イイイイは○○ポイントの
 ダメージをうけた!
 とかメッセージが表示されてる裏でなされている計算です。

 多くのRPGでは、次のような式がだいたい使われています。『A−BC』 (Aは攻撃側の攻撃力、Bは1/2とか5/8とか適当な修正値、Cは被攻撃側の守備力)
 基本は、これだけです。想像してたより簡単でしょ?
 なぜこんなに単純かという理由ですが、元がテーブルトークのRPGのサイコロを振っての判定をベースにしているからだと思われます。 要するに暗算能力が日本人に比べてかなり低いアメリカ人でも即座に計算できるレベルの簡単なものってコトです。

 もちろん単純であるということがイコール幼稚ではゼンゼンなくて、単純であるからこそどのような場合でも、 ほとんど破綻なく対応できるという大きな長所もあります。
 僕自身もFC版の桃太郎伝説以外では、天外IIもLinda3もこの『A−BC』を使っています。ただXYZまで使っても足りないくらいの 様々な修正や補正の値は、それぞれのタイトルのオリジナリティを出すために加えてはいます。
 ちなみにDQもずーーーーっと『A−BC』です。

 ロングセーラーの『A−BC』にもいくつか僕の気にいらない点があります。毎度毎度何とかしたいと思って挑戦を企てています。
 が、「時間不足」「根性不足」「ハードの処理速度不足」で抜本的解決手段を見い出せないまま、とりあえずその場しのぎの ゴマカシを付加するのみでした。

 例えば、A≦BCの場合には当然、ダメージはゼロです。
 結果としてオーバーレベルになると、何でもかんでも
 アアアの攻撃!
 しかし、イイイに
 ダメージはあたえられない!
 になってしまってゲームとしては、緊張感のカケラもなくなります。
 仕方なくダメージがゼロの場合は、1/2でダメージ1、1/4でダメージ2とか、計算上は存在しないダメージを無理矢理出す ゴマカシをやってるわけです。
 で、これを逆手にとったのがメタルスライムです。(逆手にとって、さも最初からねらってそういう風にしてあるかのように見せかけて、 ゴマカシをゴマカシでなくしてしまうところが、あの先生の実は凄さです。)

 あと、いつも気になるのが『A−BC』の答が同じ1の時、例えば「A=2、BC=1」「A=20、BC=19」「A=200、BC=199」の 3つは、本当に同じことを意味しているのか、ってことです。
 僕にはどうしても「200−199」の答の1より「2−1」の答の1のほうが痛いような気がするのですよ。
 年収が100万円の人の1万円と、年収が1億円の人の1万円は価値が異なるだろうし、体重56Kgの産後の妻が3Kg戻すのと 小錦が3Kg減量とかナリタブライアンの馬体重−3Kgじゃ決意が違うぞ(ダイエットにつきあわされる夫は、真夜中にコンビニで サンドイッチを隠れて食う。)というのが実感です。

 例外もありますが、こういう実感を再現しているゲームのほうがたいていの場合、面白いと僕は思っています。
 で、また、性懲りもなく今回もチャレンジしているところです。
 少し解決の光明が見えているのは、パワーバランスを差じゃなくて比で捕らえていくやり方にしてみたら、思ったより使えそうな数字が 部分的に出ることがわかったということです。

 実はFC版の桃伝は攻守を比で捕らえて、さらにダメージの蓄積でその比が変化するという、バランスはともかく今考えてもえらく斬新な システムを採用していました。
 おかげで1回よけると戦局が一変しますし、先制絶対有利。
 ある意味でリアルな(逆に言えば理不尽に負けることも多々ある)バトルになっています。
 真面目に真剣での勝負を再現しようとしたのは、若気の至りでした。

 それとPSは、処理スピードがさすがに速いので、今まで現実的には使えなかった3次元方程式とかまで使えるのでヘンチクリンな修正値も 山ほどつけられます。
 レベルアップのたびにクロソイドカーブで上昇するHPなんて「俺の屍」には、もってこいって言ってもイメージがわからないだろうけど、 とにかく便利なんです、これが。
 例えば先の『A−BC』を『√(A^2−BC^2)』に変えるだけでメリハリがつきますでしょ? ぜんぜん例になってないな・・・。
 グラフにして見せてあげられたら、伝わるだろうに。
 有機曲線オタクの僕としては、射精モンの喜びと表現して過言ではありません。


 ハードの処理スピード向上によって、多次元方程式が使えるようになった、という話しました。
 PSやSSで3Dの迫力ある対戦格闘ゲームが登場できたのもこれの寄与があるわけです。
 で、ついでに似たような演出を使ったRPGも、雨後のタケノコのごとくリリースされました。

 これらのRPGですが、見た目でとにかく既存のタイトルと差別化されますし、まともな競合商品がありませんから、まんまと売れたようですね。
 非常に個人的な意見を言わせてもらうと、けっこうドキドキさせてくれるのもあったし、びよびよしてるだけのもありましたが、 結局のところ先に書いた3Dの演出はただの演出で、ゲーム性までを変えたモノは、少なかったように思います。
(いや別にあの手の演出を否定してるわけじゃありません。演出もいろいろな方向があったほうがステキに決まっています。)

 そのへん、まだまだ新しい面白さの発掘がされるべきだと思うんですよ。
 未知の金鉱がたくさん埋まってる気がします。
 例えば、「アクアノートの休日」の世界で、目的が「Linda3」のRPG(?)を想像してみてください。
 自分の周囲、前後左右上下360度を泳ぐ海洋生物を捕獲するなんて、楽しそうでしょ? あのピコ〜〜〜ンとかいう音で魚を呼び寄せるとか、 魚礁を造って集めるとか、網を仕掛けて追い込むとか、捕まえる方法もいろいろ考えられるでしょ?

 例で書いたにしては、けっこう面白そうですね。このアイデアの実現性はどうだろう、長谷川クン?
 ちなみに長男の夏近は、ハセガークン(彼はこう発音する)に、熊本で会えるのを楽しみにしているようです。

 話の脱線ついでに、長谷川君への私信。
 夏近はLinda3のシナリオCをアレから1ヶ月ずっとプレイしています。字はカナしか読めないくせに、なんだか地上の動物はほぼ集め終えて、 オークションにも参加しているようです。
 最近はマッピング(本人のみ解読可能)まで始めました。
 さすがにイベントは手がでないので、地下へは降りられないようです。
 それとバードラインもどうやって使い方を知ったのかはわかりませんが、乗りこなしています。おかげで「赤、青、緑」という漢字は覚えたようです。
 4月21日で4歳の誕生日なので、お子様とケーキを食べに来てくれると喜ぶと思います。プレゼントはカーレンジャーか、 ビーファイターカブト関係なら、200円くらいのお菓子のおまけでも、死ぬほど感激してくれますので、よろしく御手配ください(笑)。

 それはさておき、多次元方程式の話の続きです。
 長谷川君(今さらだけど、イースI・II、天外II、Linda3、それと「俺の屍」のメインプログラマー。見た目はそのへんの親父だが、 「超」をつけたくなるくらいの凄腕のプログラマー。円谷関係にも造詣が深い。)の「俺の屍では、2乗とか3乗とかを使用してよい」旨、 聞いた時は、全身の毛穴が一斉に開くのがわかるほど興奮しました。

 ナゼかと言うと、「キレたキャラクター」が僕のテリトリーであるのと同程度に、それは僕の力を伸び伸びと発揮できる領域に他ならないからです。
 実は大学の頃の生活費の大半は、それを使って作っていたので扱い慣れているのです。
 あの頃は、荷物の配送や工場の生産ラインの効率化プログラムや、舞台用のレーザー光線や噴水のシミュレーター、そういう得体の知れないモノ (実はほとんど使いモノにならない)を作っては、企業を騙して大金をせしめていました。
 今から思うとアレは詐欺の一種でした(笑)。

 だけど今回は、その使用目的がゲームなので「詐欺」で十分なわけです。
 多少、計算式が綻んでいたところで、端があるような世界でもゼンゼン問題ない!
 今回も前回の話も何が書いてあるのか、読んでる人は要領を得ないんだろうナ、と想像はできます。
 けど、まあ、とにかく、新しいオモチャを手に入れた、あるいは昔の恋人が帰って来た喜びを (分かちあえないまでも)伝えたかったわけです。
Alfa・MARS PROJECT