頭の中でゲームをする
02/03/07
次男は来年小学1年生、先月6歳になったばかりだ。 父親の仕事と長男の影響でゲームが好きだ。 いちおう始めたゲームはクリアを目指す。 ところがこの年齢にとって、99%以上のゲームは難度が高い。 極めて易しいアクション系ゲーム以外は事実上クリアは無理だ。 そこで彼はユニークなプレイ方法を考案した。 ルール、世界設定、登場人物、ノリ、このあたりの要素をおよそ把握した段階で“頭の中でゲームをする”モードに切り替えるのだ。 もうモニターもゲーム機も必要ない。 あえて言えば、彼にはその大半が読めない、絵や写真を眺めるためだけの攻略本が1冊あれば十分だ。 彼の1番のお気に入りは、なんと“ネクストキング”らしい。 僕が彼の口から聞いた、オリジナルの冒険談だけでも20を越える。 おそらくは彼が創造した冒険は、その何倍もあるのだろう。 なにしろ2年以上プレイしている、もちろん“頭の中で”だ。 実にコストパフォーマンスが高い。 僕も似たようなことをよくやる。 僕の場合は、開発中のゲームの仕様やシナリオを書くときだ。 たとえば、この洞窟の道幅は何mくらいで、これくらいの温度と湿度で、たぶんこんなニオイ。 こんな怪物が住んでいて、こんな物を食べているだろう、とか。 マップを決める前に、主人公が住む町の中を歩き回ってみたり、店で買い物をすることも多い。 近ごろはもっぱら竜に乗っている。 竜は人の言葉をどれくらいの期間で、どの程度理解するのだろう。 竜に乗ると、どれくらい遠くまで見えるのだろう。 竜は1日何度フンをし、何度エサを欲しがるのだろう。 当たり前だが、こういうことは乗ってみないとわからないのだ。 このような空想は6歳の子供には容易でかつ楽しい。 が、40過ぎると、けっこう疲れる。 おそらくは仕事として納期が設けられた段階で、20代でも苦痛が伴うようになる。 だからだろうか、そのあたりがイイ加減なゲームが少なくない。 この類いのゲームは、グラフィックがいかにリアルであっても僕にはリアルさが感じられないのだ。 次の話は、例としてはわかりにくいが、とりあえず。 2カ月ほど前、竜に乗っていた僕は、そのゲーム世界での事実や慣習をいくつか発見した。 「竜使いの平均寿命は、一般人の3/4に満たない」 「竜使いは来週の約束をしない」 この世界の住人は、これらのことを知ってはいるが、取り立てて話題にはせず、竜使いたちの出撃を日々見送っている。 だとしたらジョークや挨拶ひとつの裏にもせつなさが必ずある。 「こんど一杯やろうよ」と彼らは言わないはずだ。 「今から一杯やろうよ」か、せいぜい「(無事戻ったら)今晩、一杯やろうよ」だ。 …ということに僕は気づいてしまった。 そしてまた疲れる。 次男の数々の冒険談を聞くのは楽しい。 彼をうらやましく思う今日このごろだ。 |