メーカーはテストプレイヤーの意見を反映しているか!?
99/12/14
「メーカーはテストプレイヤーの意見を反映しているか!?」 結論から言えば、メーカーにより個人によりさまざまなので一概には言えない、というのが正直なところです。 またテストプレイの結果を反映すると言っても、企画段階で調査を掛けるような場合から、 マスターアップ寸前にフリーズしたから仕方なく直すといった切羽詰まった状況まで、いろいろです。 なので、今回は「なぜメーカーは調査しないか、ユーザーの意見をあまり聞かないか」の構造的なジレンマについて、 メーカーに代わって僕が言い訳してみます(笑)。 1.調査費用がない:
メーカーは「どの媒体にいくら広告を出せば売れるか」という利益に直結する命題には興味を示しますし、場合によってはお金も払います。
また商品価値を下げる「フリーズするバグを取る」ことには、費用を割きます。 が、「どうやったらゲームがおもしろくなるか、客が喜ぶか」というような調査は基本的にやりません。 「おもしろいゲーム、客が喜ぶゲーム」は「売れるゲーム」を構成する1要素でしかありません。かつこの要素は再現が難しく非常に不確定です。 企業は利益を追求する組織です。この不況時に対費用効果が明快でないことへの投資は避けます。 2.開発期間と開発費用には限りがある:
データの収集から分析、さらにその結果をゲームにフィードバックするのには時間とその作業を行う人が必要です。
時間や人間はすなわち出費です。 たとえば開発期間1年スタッフ延べ人数33人で発売されたゲームAと、開発期間3年スタッフ延べ人数100人で発売されたゲームBでは、 採算の分岐点がおそらく3倍以上違います。 運転資金が潤沢ではないメーカー(おそらく現在は7割以上のメーカーが当てはまります)は、ゲームAの開発を選択したほうが短期的なリスクを 分散できる可能性が理屈のうえでは高いわけです。 ゲームAの開発には、スピードが絶対条件です。 調査なんていう面倒な過程は省略されがちです。 3.調査の方法を知らない:
「どうやったらゲームがおもしろくなるか、客が喜ぶか」
こういう類いの調査は、よほど調べたいことが具体的でなければ、 (プロデューサーレべルの人が「○○○はCなのかDなのか、どっちなんだ!?」とか、かなり明快で強い問題意識をもっている必要があるって コトです)有効なデータが取れません。 また調査票の設計やサンプリングの方法にも専門知識が必要です。 一部のメーカーには、マーケティングのスペシャリストがいる場合もありますが、多くは営業か宣伝の担当です。彼らは開発には 直接タッチしていません。 4.データを読み取る能力がない:
仮に有効なデータが取れたとします。
しかしながら調査依頼者、あるいはそのデータを利用する人に、データの意味を読み取る能力がないとあまり役に立ちません。 たとえばテストプレイヤーから「ボスキャラEは攻撃力、高過ぎるゼ」という意見がでたとき、その対処法として 「ボスキャラEの攻撃力を下げる」。 これは思慮が足りません。 ○プレイヤーキャラの成長を手直ししてキャラ自身の守備力を上げる。 ○プレイヤーキャラの成長を手直ししてキャラ自身のHPを上げる。 ○鎧の値段を下げることで、プレイヤーキャラの守備力を上げる。 ○ボスキャラEの攻撃頻度を下げる。 ○回復魔法や回復アイテムの効果を上げる。 ○ボスキャラEの出現場所をゲームの後半に移す。 ○ボスキャラEの弱点を町の人の情報に加える。 …などなど答えはいくらでもあります。 テストプレイヤーの意見、つまりデータの本質を見極める能力と、そのゲームのシステムに対する理解が必要なのです。 これは企画レベルの調査データの分析ではさらに難解です。 「答えを見つけよう!」という意識の高さがなければ、まず無理です。 たいていは最初からあきらめて、いわゆる“勘”に頼るケースが多くなります。さらにこの“勘”がたまたま当たった場合にのみ 「天才!」などと囃し立てられ脚光を浴びます。 このようなケースでは個人にノウハウや経験が蓄積されることはあっても、組織には残りません。 5.企画内容の漏洩を恐れる:
これは説明の必要がないでしょう。
知る人が増えれば秘匿契約をしていても、しゃべりたくなる人は比例して増えます。 企画の初期段階では、そのままパクられる危険性すらあります。 MARSの掲示板等には企画書がアップされていることがよくありますが、客観的に見れば“大馬鹿者”です(笑)。 ま、マネしたくないようなくだらない内容ばかりなので、今のところ深刻な被害はないですけどね。 桝田省治
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