リアルな、町の人の台詞の書き方
00/07/03
ここで言う“町の人の台詞”とは、RPGなどに登場する名もなき町の人の台詞である。 そのインフォメーション内容の多くは、クエストのヒント、世界観やキャラの補完情報である。 またたいていの場合、文字数にして100文字前後の断片情報である。 特定の情報を伝達する機能が優先される、きわめて短い文章であるから、だれが書いても同じようなモンになるはずだ。 が、実際にはそうではない。 同じ中身の情報を言っても、生活観があったりなかったり、印象に残ったり残らなかったりさまざまだ。 つまりは書き手の腕の差が出る。 てことで、今回は桝田省治流の“簡単にらしく見せる”町の人の台詞の書き方。 最近、ある文章を見て、汎用性の高いテクニックを2つ3つ確立したので公開する。 1.まずそのキャラが伝えるべき情報に対して、どんな印象を抱いているか決める。 2.その印象に従って、伝えるべき情報の後にそのキャラの個人的な感想や推測を続ける。 3.異なる、できれば逆の印象をもつ別のキャラを設定し、同じ情報を言わせる。 このHPを見ている人がわかりやすいネタとして、PCエンジン版のリンダキューブの発売時の話を例にする。 ここで伝えるべき情報は「東に洞窟がある」の代わりに「PCE版のリンダは2万本売れた」である。 町の人A: PCE版のリンダは2万本も売れた! 実稼働台数が数万台、既にPSも発売されていた PCE末期に初日だけで2万本という驚異のセールス! まさに化け物タイトルと言える。 町の人B: PCE版のリンダは2万本しか売れなかった。 あのショボイ画面じゃ当たり前である。 おまけにフリーズするバグまであったらしい…。 僕に言わせりゃクソゲーである! 実は上記の文章は両方とも僕のオリジナルではない。 “リンダキューブ”で検索していて偶然目にしたものだ。 事実はこの際どうでもいい。 個人レベルの解釈ではふたりとも正しいし、2つが存在することで「PCE版のリンダは2万本売れた」という情報が立体的で リアルになっている点に注目してほしい。 さらにもう1点。これが最も大切だ。 解釈のベクトルが逆の2つの情報が並列されると、3つ目の“プレイヤーの解釈”が生まれやすくなる。 で、自分の頭で考えた時点で、その情報は既に町の人の台詞ではなくプレイヤーのモノとして昇華している。 つまり覚えたわけだ。 桝田省治
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