桝田家の宿題と英才教育
99/5/19 桝田省治
毎朝、長男と奥さんは一緒に家を出る。 長男は途中の駅で降り登校。妻は都心まで通勤だ。 先週のある朝、長男が何を思ったか下車した後、動き出した妻の乗った電車をバイバイをしながら追いかけてホームを走ったらしい。 見事にホームの柱に激突するのが電車の窓から見えたと妻は言う。 で、よせばいいのにそのぶざまな様をその日の夜にからかったそうだ。 そして今週月曜の朝、先週同様に長男が駆け出し再び柱にぶつかるのを妻は目撃した。 しかし前回と少し違い、長男は柱の位置を確認しながら走っていたそうだ。 彼女はその事件をおもしろそうに僕に話してくれた。 その夜に僕が長男に出した宿題である。 「同じパターンでもう一度うけるにはどういう工夫が必要か考えろ。そしてそれが正しいか否か実行して確かめてみろ。うまくいったら100円」 友だち数人で示し合わせ一斉に同じパターンを実行する、柱にぶつかる前にころぶ、柱にぶっかったとき隠し持っていた星(星型に切り抜いた金色の紙に 針金などをくっつけたモノ)をすかさず頭の上で回す、などのアイデアを例として挙げておいた。 最近の妻の悩みは、長男がウソをつくこと(いわゆる虚言癖)だそうだ。 子供のころからウソばかりついてると将来ろくなモノにならないと、彼女は言う。 しかしながら彼女は、彼女の夫もまたウソばかりつく子供であったことを知らないし、大人になっても治らない彼女の夫の虚言の才で彼女の家族の 生活が成り立っていることを忘れている。 もちろん、彼女の心配通りろくなモノにならないことは確かではあるが。 桝田省治
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