リアル・アドベンチャー・ゲーム
04/12/06
先月のある休日。関西に住む母から電話。 一族の大おばあちゃん(僕のじいさんの世代の最後の生き残り)が亡くなったという知らせだ。 通夜の場所は 「親戚Aの家の近所のセイワカイカン。最寄の駅Bにつけているタクシーの運転手なら誰でも知ってる、らしい」と母の説明。 翌日、僕は新幹線で3時間。台風が刻々と迫る中、大阪市内某所の駅Bに到着。 まだ6時半なのに真っ暗、かつ雨風もけっこうきつい。 さっそくタクシーに乗り込む。 が、運転手は“セイワカイカン”を知らないと言う。 2台目、3台目、4台目…、で諦めた。 母の携帯に電話。「電源が切れているか電波の届かない…」 親戚Aの家に電話。「留守にしております。ピーと鳴ったら…」 番号案内に電話。「セイワカイカンでの登録はありません」 駅の地図を見る。隅々まで捜したがない! 同地図で交番を捜す。2〜3キロ離れている。 さ〜て困った。 最後に残った手がかりは“親戚Aの家の近所の”。 僕が最後にその親戚の家を訪ねたのは大阪万博のあった1970年。 当時は岡山に住んでいて小学4年生くらいか? 実に34年のブランク。 まず思い出したのは星型の交差点。五差路だ。 岡山にはそんなものはなく、信号がどういう順番で変わるのかとても不思議でしばらく眺めていた記憶が蘇った。 再び駅の地図。発見! あったよ星型! 次に思い出したのは路面電車。 しかし今は廃止されている。 が、路面電車が走っていた道路なら、他の道より太いはず。 路面電車は90度に曲がれない。 と推測し、星型の交差点を見ると、それらしい道路が見つかる。 最後に思い出したのが焼きソバ。 親戚Aの家は1階が軽食と駄菓子の店だった。 僕は親戚Aの家に着いて、そのおばあちゃんに焼きソバを作ってもらった。 そこに近所の学校の野球部の連中が数人来て、僕の焼きソバを取ろうとしておばあちゃんに叱られた。 なんでもその野球部には、当時売れっ子であった漫才師ぼんち(おさむちゃんで〜す、とか、そうなんです川崎さん、とか)の どちらかがかつて所属し、親戚Aの店にもよく来た、と聞いた。 ということで、野球部のグランドがありそうなそれなりの広さの中学校、高校を路面電車が通っていたであろう道路に沿って、また 地図をなぞる。 この条件に合う学校を二つ、地図の東西に発見。 そのどちらが正解なのか判断する材料はもうない。 が、片方の学校の比較的近くに、偶然の一致か“聖和公園”なる名前を見つけ、そっちに決め打ちする。 「聖和公園…、ありふれた名前だよなあ」と何度も思いながら、さらに激しさを増す雨の中、歩くこと20分。 無事にセイワカイカンを発見。 この施設は聖和公園内の一施設で、今春オープンしたばかり。 正式名称は「聖和公園ウンタラカンタラ会館」で、近隣住民間の通称がセイワカイカン。 当然ながら電話帳には通称では登録されてない。 人間の脳。 追い込まれると、34年前の記憶でも必要に応じてかなり正確に引っ張り出すことができることが証明された。 めでたし、めでたし。 |