石鹸の引き際
99/1/25 桝田省治
”俺の屍を越えてゆけ”は、もうすぐマスターアップの予定。 僕の作るゲームの常として、このタイトルもまたジャンル分けがとても難しい。 とりあえず思いついたのは「後継者育成RPG」。 で最近、後継者育成とか世代交替とか引き際などについて、ボ〜っと考えている。 日経新聞夕刊のコラムには経営者の”進退の美学”みたいな話がよく掲載される。 そこでの論調の8割がたは”潔い退陣”を日本人的で美しいと位置付けているように思う。 要するに老いた経営者は才能のある後継者を見つけたら、いつまでも未練たらしく残ってないで、きれいさっぱり引くのが会社のためだし、 カッコもイイみたいなことが書いてあるわけだ。 でも人間誰しも自分の衰えを認めるのはイヤだし、とくに創業者は会社は自分のモノという意識が強い。 頭ではわかっていても決断しきれないのもよくわかる。 なかなか難しい問題だ。 で、タイトルの「石鹸の引き際」の話。 ちびて薄くなり使いにくくなった浴用石鹸、どうしてますか? わが家では深刻に使いにくくなる前に、古い石鹸を新しい石鹸にくっつけてしまう。 こうすると最後まで無駄がないし、くっつけて数日多少違和感があるくらいでとくに不便もない。 昨日息子の体を洗ってやっていて、石鹸が白一色になっていることにふと気づいた。 10日ほど前にくっつけた前の石鹸のオレンジ色がいつの間にか消えていたのだ。 石鹸にも使う僕らにとっても理想的な終わり方だと思った。 オレンジ色の石鹸は最後の1グラムまでその存在理由を全うした。 僕の家族は最後までちびて使いにくくなるという煩わしさを感じることがなかった。 消えたことをことさらに主張しないところがまた奥ゆかしいではないか。 これ以上完ペキな最後を僕は知らない。 後継者育成、世代交替、引き際、かくあるべし。 オレンジ色の浴用石鹸に学ぶ。 桝田省治
|