リ島雑記1、バリの芸術

99/2/8 桝田省治


 バリ島では毎日どこかでお祭りがある。何十もあるホテルのディナーショーも毎夜のごとく開かれる。
 演奏者や踊り子の数はかなりいるはずだ。いったいどれくらいるのだろう?

 彼らはあの高度な技術をどのようにして身につけるのか?
 誰が教えるのだろう? 学校でもあるのだろうか? 聞いてみた。

 「バリ島には芸術大学があるのです」と、ガイドは誇らしげに答えた。
 伝統芸能を守るために大学まであるなんて素晴らしい、と言うとガイドは笑ってこう言った。
 「基本なので大学でも教えます。が、伝統的な楽器やダンスをうまく演るだけなら、親に教えてもらうだけで十分。大学までは必要ありません。」
 じゃ、何のためにわざわざ大学まで作ったのよ!?、と問う。
 「新しい芸術。未来のバリの芸術を作るためです!」
 芸術家でも何でもない人がこういう凄いことを平然と言う。

 あれだけの完成度をもつダンスや音楽に飽き足らず、まだ上を目指そうとしているらしい。
 つくづく芸術に対して貪欲な人々だと思う。

 あまりにガイドの笑顔がさわやかだったので、イジワルな質問をひとつしてみた。
 最悪の場合、新しい芸術のせいで今のダンスや音楽が廃れることになってもしかたないってコトか?
 「ヒンズー教には3人の神様がいます。
 作る神様、守る神様、壊す神様。でも本当はこの3人は、3人でひとり。日本語で言う“三位一体”。
 芸術も生活も同じです。」
 当たり前ではないか、という顔で答えられると僕は困る。

桝田省治
 ちなみにその芸大の学生には日本人も少しいるらしい。
 バリの新しい芸術を外国人が作ってもゼンゼン問題ないらしい。
 けっこうなことだ。
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