ンダ小説後書き

98/??


 どうせ十人のうち九人は本屋で先に読むであろう、後書き

 この本を手に取った方ならご存じと思うが、いちおう簡単な説明から。
 この小説は95年にPCエンジンで発売され、その後プレイステーション、セガサターンと移 植された、RPGと呼ばれるジャンルの同名のテレビゲームが原作だ。
 システムもシナリオも相当“ヘン”で、一部には大受けした。
 しかしながらブレイクとかメジャーという言葉とは縁遠いゲームだったりする。
 で、この後書きを書いている僕は、そのゲームを企画し仕様やシナリオを書き監督をした、い わゆるゲームデザイナーだ。

 ゲームのほうには舞台や人物は同じで展開の異なる三つのシナリオが収録されている。
(安売りのパンツみたいな売り文句だが、三つまとめてあの値段は超お買い得!)
 小説ではそれらのオイシイところが“彼女の腕のように”つながっている。
 読めばわかるが小説自身の出来がいいので、ゲームのリンダを遊んだことのない人でもかなり 面白いはずだ。
 が、本当に楽しめるのは、ゲームをプレイした人たちであることは間違いない。
 なにしろここに描かれているのは、四つ目のパラレルワールドなのだ。
 またしても人物の配置や事件の意味が微妙にずれている。文字通りの意味で話が違う。
 「ちょっと待て、で、どうなるんだよォ!?」のコンボ(ゲーム用語、連続・連携の意)技の 炸裂だ。
 さらにゲームというメディアでは“必要以上に”厳しく規制される非倫理的な表現も“必要以 上に”全快だ。

 実を言うとこの後書きを書いている今、結末の三十ページほどがまだ手元に届いていない。つ まり最後まで読んでいないのだ(笑)。
 残り三十ページまで来て、共著者ということになっている僕にすら先がわからない。
 まんまと「ちょっと待て、で、どうなるんだよォ!?」状態にハメられている。
 最初の小説の打ち合わせのときに「面白けりゃ何でもアリ。好きにして。」とイイ加減なコト を僕は言った。それは確かだ。
 でもなあ「面白すぎるゼ、窪内! 細かな台詞の直しなんてこっちで適当にやるから早く続き を読ませろ、この野郎」。これが現在の控えめで正直な気持ちである。
 数百円でこういう苦しみを味わうこともなく、いきなり完成形でこの小説を読めるアナタを心 底うらやましく思う。
 後書きはこれで終わりだ。さッ、レジへ行こう!

 
“俺の屍を越えてゆけ”のデバッグ作業をしながら…      桝田省治
Alfa・MARS PROJECT