天外II 絹の話
95/12/10
オーダーがあったから仕方なく考えた その1
絹の鬼怒のシーンですが、あれは広井さんだったか、ハドソンの方から「ユーザーの希望が多
いから、今度は(前作よりも)主人公をもっとしゃべらせろ!」というオーダーがあって、それ
を受けて実は仕方なく作ったシーンなのです。 僕自身は「主人公がしゃべると白ける」派なので、あまりやりたくはなかったのです。(FF が苦手な最大の理由はこれ) でもオーダーなのでいれないわけにもいかないし・・・で、ない知恵を絞って妥協案を考えた わけですよ。 まず、プレイヤーにコントローラーを預ける前の導入部に入れるのは、どうせまだ主人公に感 情移入してないし、キャラ立てにもなるしで、「母ちゃん、おかわり!!」 次は、最初の聖剣を手に入れて、初めて暗黒ランを撃破するとこ。 まあ、よほどのヘソまが りを別とすれば、たいていの人は感情が高揚してるはずだから「我が道に敵な〜し!」 まっ、これは気持ちいいだろう。 |
白銀城のシーンの話(ネタバレ) その1
問題はこの後なんだな。なにしろどういう心理状態でプレイヤーが各シーンにたどり着くか読
めない。正確に言えば、先差万別の状態でたどり着くに決まってる。 ということは、プレイしてる人全員がそれなりに納得のいくピッタリのセリフなんてありえな い。 悩みました・・・・ で、結論としては、普通の感覚の人ならベクトルの向きが同じになる、究極の設定を作るしか 道はない。 「自殺を止める」→「自殺を止めたくなるような理由」→「美しい少女」「謎」「戦力として 後が楽」「紅一点」「自分にしか止められない優越感」等々。 で、例のシーン、 「絹! 俺が一緒に歩いてやる!」云々。 桝田省治後者の計算尽くの技なんだけど、桝田省治前者もけっこうこの手は気に入ったらしく て、リンダでも、「リンダ〜、おまえが世界中で1番好きだあああ」とか、主人公がやってるわ けだ。 実生活で絶対言わない、気恥ずかしさが心地良い。 |
白銀城のシーンの話(ネタバレ) その2
「ダンは、ダンよ!」(Na菱見百合子)この台詞にピンときてしまったあなた、歳がバレますよ(^^) これはウルトラセブンの最終回、自分がセブンだと告白した主人公ダンにアンヌが応える台詞です。 子供心によほどこのシーンに感激したに違いない僕は、毎度「絹は絹」「タムリンはタムリン」 「ケンはケン」とやって、自分の感動のおすそわけを試みているわけです。 大人になってからは、さすがに作り話に涙モンで感動できなくなってしまって(まあ、そうい う人が他人様に感動を与える商売やってるのも皮肉ではあるけれど) 純粋であったであろう頃 の記憶を辿って使っています。 僕はこれを「感動のリサイクル運動」と勝手に名づけました。 しかし、こういう職業につくとわかってたらもっといろんなジャンルのものを観とくんだった・・・ なにしろ「ウルトラQ」「ウルトラマン」「怪奇大作戦」「ウルトラセブン」「ゴジラ」「ガメラ」くらいしか記憶にない。 おかげで僕の描く人物は、全員モンスターみたいなのばっか・・・ おそらく僕の作風に1番影響を与えてるのは実相寺監督だったりするんだろうな・・・(ちと情けない気もするが) |
オーダーがあったから仕方なく考えた その2
「天外II」の製作途中にSFCが投入され、対するPC-EはDUOで対抗という構図でした。 で、オーダーというのは他でもない「回転・拡大・縮小をこっちもできるということを最初の 30秒でアピールするのだああ!」 ・・・なんだけど、そんな機能はPC-Eにはどこを捜してもないんだな、コレが。ということ は「回転・拡大・縮小」分の絵のデータを全部持たなければならないわけです。 岩崎君にデータをなるべく小さくする方法を相談したところ、「背景に凝らない。理想は背景 なし。つまり黒。」「回転・拡大・縮小の対象物は単純なもの。できれば幾何形態。理想は球体。」と、 そっけなくも有り難い助言をいただきました。 「球体じゃ回転してるのがわからない」という問題を球体を2つにすることを思いつき、あと は彼の助言そのまま、黒の上で球が「回転・拡大・縮小」となったのです。 設定はその後で辻ツマ合わせたんだ、実は。 黒の上で球が行ったり来たりするだけのシンプルな絵面で重厚でカッチョイイ設定。なおかつ その重厚な設定の説明は10秒くらいで済ませなくてはならない。さらにこの時点で、後のシナ リオはだいたい出来ててそれを活かしたい。 プロのゲームデザイナーって、こういう過酷なパズルを2ヶ月に1回くらい解いてんです。け っこう大変なんスよ。 創造主の手から解き放たれて、「黒くてデータの少ない」宇宙空間を「回転・拡大・縮小」し ながら地球を目指して飛来する2つの「球体」の本当の誕生秘話でした。 |