心の通じ合える『異常者』の正しい生み方とその育て方
97/07/01
ある人に言わせると『異常者』を描かせたら、僕は業界ナンバーワンだそうです。(ほめられてんだか、けなされてんだか…) というわけで、今回は『異常者』のキャラ設定の裏話です。 誤解のなきように最初にお断りしておきますが、僕本人は変わり者レベルです。決して『異常者』 ではありません。ウヒヒヒヒヒヒ… 僕のかかわったゲームを一本でもプレイした方ならおわかりと思いますが、僕のゲームには思い切りよく ぶちキレた人物が必ず登場します。 それを待っている困った方たちも少なからずいらっしゃるようなので今さらやめるわけにもいきません。 結果として新しいゲームを作るたびに、正常である僕が趣向の異なる『異常者』を次々に生み出す苦労をするハメになるわけです。 実はなかなか大変なんですよ、コレが。毎度毎度の難産です。 理由は簡単。 普通の(?)『異常者』では、常人であるプレイヤーとの間に心理的接点がほとんどない。 こんなキャラでは行動や言動が理不尽すぎてシナリオに説得力が出ません。文字通りお話にならない。 では我々常人と心が通じ合う、奇特な『異常者』とは、いったいどういう条件の人物なのでしょうか? 僕なりの答を書くかわりに恥ずかしい体験を告白をします。 もうすぐ五歳になる僕の息子は、生まれつき歯のエナメル質が薄いそうです。一歳の誕生日には顔を出したばかりの 四本かそこらの歯が全部虫歯だと医者に告げられました。 それから僕はずっと毎日欠かさず彼の歯を丁寧に朝晩磨いています。 あるとき近所のデニーズで息子と同じくらいの年齢の子供を見かけました。おいしそうに大きな口を開けて 何かを食べていました。 一瞬、その子の歯を全部引っこ抜いてやりたくなったんですよ… だってウチの子の歯は、僕が一所懸命歯磨きしてるのに質の悪い再生紙みたいな色、その子の歯は真っ白だったから。 ご安心を。まだやってません。 そのかわりに「M博士」というキャラクターを考えつき、リンダキューブ(ソニーより今夏発売予定。お楽しみに!) に登場させました。 子供の自殺を逆恨みして、主人公を追いかけ回す、うだつの上がらない中年男です。 彼は自分の行動が逆恨みだとに自覚しています。でも止まらない…。 わかりますか? 僕のいうところの常人が理解できる『異常者』とはこういうキャラクターです。 誰でも何かの弾みでいつでも踏み込める、精神的にはすぐ隣りの領域に常にいる、そういう連中です。 だから笑えるし、だから怖い。 というわけで、僕はお客様の期待に応えるべく、今日も自分の中の異常や狂気を探しているのでした。 こんなことばかりやってると『ホンモノ』になる日も近いかもなあ… ウヒヒ… ウヒヒヒヒヒヒ… ご意見・ご感想・ご希望等ありましたら、軽い気持ちでお便りください。じゃまた、来月! ウヒヒヒ… プロフィール・近況 もうすぐ発売予定の『ネクストキング』と本文の中にも触れた『リンダキューブ』の調整でて んやわんやの毎日。その後すぐに5タイトルのRPGを同時に制作開始しなければならないらし いし、死ぬかも…。 |