No.44モジョ谷さん

最近リンダキューブアゲインをダウンロードし楽しんでいる。
でもこのゲームの存在は発売当初から知っていた。
その頃の僕は芸術大学に通う学生だった。
一人暮らしをし始めて、親の束縛を離れた僕は好き放題ゲームをして,天国のような生活をしていた。
でも、このゲームだけには手を出せなかった。

僕の周りにはゲーム好きが多くいたこともあり、
なんとなくのシナリオやシステムを聞きかじっていた。
そして当時最高のRPG(現在は俺屍)と思っていた「天外U」の桝田氏がデザインをしていると聞いては、「欲しい」思い、ゲーム屋に行くのだけれど
レジに持ってことができなかった。


買えなかった理由のひとつはリンダの存在。

当時付き合っていた女性が、九州から僕を追いかけて関西で就職し、近くに住み始めた時期だった。
そのことを男として嬉しく思う半面、
大不況の中、芸術など食えるかどうか全く未知数の僕を頼ってきた彼女を疎ましくも感じていた。
だから、一人の女性と生涯を誓うことが冒頭にあるシナリオなど、僕には本当に辛すぎた。
1年後、彼女と別れた。


もう一つは、ジャケット。

赤地に白の掌紋が怖かった。
当時、僕がゲームに熱中していたのは「違う他人になれるから」という現実逃避以外の何物でもなかった。
掌紋とは、個人が個人である証。現実逃避としてのゲームを否定された気がした。
この赤いジャケットを見るたびに恐怖した。

あれから10年以上経って、僕はかつての桝田氏と同じような仕事をしている。
そして、最近結婚をした。何時子供を作るかという話もしている。
そうした今があるのは、学生時代にリンダキューブアゲインを手に取れない苦悩をしていた僕があったからだと思っている。

結婚をし「今ならできるかも」と思い、現在リンダキューブを楽しんでいる訳だけど、一番楽しいのはBシナリオでのサチコとのやりとり。
もちろん嫁の前でこのゲームはしていない。
既婚者の♂よ、いいぞ このゲームは理解ある嫁と出会えるいいゲームだぞ。
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