新世紀エヴァンゲリオン2 戦陣記

戦陣記(18)
18 トレードオフ
 こうして、エヴァンゲリオン2における基本的な開発コンセプトが決定したが、同時にこれは、エヴァンゲリオン2特有の問題を生じさせる原因ともなった。

 これは簡単な話で、同じ時代において同じ技術力、同じビジネスモデルで作られた物はトポロジー的に等しいことに端を発する。
 分かりやすく言えば、ほとんど同じ時代に作られたゲームは相対的な資源量の差はあまりない。差が生じるのは配分によるもの、つまり比較して、単にどこを特化させたか、これにつきる。

 どこかに集中配分すれば、どこかが足りなくなる(薄くなる)のは必定で、これは問題点が生まれることを意味する、というわけである。
これを設計では性能のトレードオフという。

 同じ時代で万能の存在という物はない。全ての面で優れるとは、過去と対戦した場合にのみ成立する現象である。これは、戦術の復活を歌うエヴァンゲリオン2でも同じである。

 最強は人間であるという古来不変の法則に立脚したのがエヴァンゲリオン2であるが、歴史的に見ると、この人間が強いことを証明した例では、例え勝ち戦でもかなりの損害を出す。勝敗にかかわらず、大きな損害を出すのが、人間を使った戦の本質と言ってもいい。文字どおり血で贖う最強である。
 
 エヴァンゲリオン2での戦いの結果は、前々回から繰り返しているように、けして安い対価で得られる物ではない。

 もう一度繰り返せば、
 それは森を友にし、沼地を戦場とし、相手の不得意に衝撃を向ける、体格に劣る兵が少なくない損害を出しながら集団で勝利するシステムである。

 では損害とはなにかと言えば、ゲームにおける失敗である。
 このゲームは多くの人間が多くの失敗プレイを出しながら最終的な答えに到達する。その失敗がとんでもなく積み重なった上で人が学習した結果、戦術が成立するというわけである。

 言い方を変えれば、戦術の復活とは戦術の選択幅が広いことであり、これは同時に失敗が多くなることを示す、というわけである。両者は不可分であり、片方だけ存在することはありえない。

 設計、技術陣が最後まで頭を悩ませたのは、この失敗をいかに低減するかと言う事であった。
'18' 2004.1.15.Thu. 

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