3.エヴァンゲリオン2製作直前の状況と基本政策(1) まずエヴァンゲリオン2が生まれる前の、バンダイ側の状況を見て見よう。 ゲームビジネスにおいて火力戦の時代、つまりは資金量の多寡が勝負を決めるに及び、ここでうまく勝とうとした企業は、2つのタイプに分化した。MBAでは多角化と新製品と言うが、芝村風に言えば、砲の分散と集中と言える。 弾である資金を叩きこんで勝敗を決する場合、重要なのはその発射台たる砲。 つまりお金を娯楽に変換する装置とその配置である。 これには砲を分散して配置する方式と、集中配備する方式がある。 現代は集中配備から分散型へシフトしようとしている最中である。 なぜ集中配備に人気があるか。当然火力は集中配備した方が強いし、指揮上も集中配備するほうが、将校(幹部社員)を多く使わなくていい、という理屈である。 育成機関がないどころか、内紛激しい将校不足の深刻なゲーム業界では、必然的に集中型となった。
この項の主人公であるバンダイは、分散型の代表である。 バンダイは首脳が変わってからこちら、明確に砲の分散配置とその火線のクロスを希求してきた。もとより砲(ゲームから食玩までのプロダクツ)が分散していたのは前からだったが、その火線を集中させることでシナジー効果を狙いはじめていたのである。 砲座のある抵抗拠点をそれぞれつなげ、有機的に繋げる野戦築城を初めてやった、と言って良い。 これはそれまで各個撃破していた、色々な会社のなんとなくの多角化とは明確に異なり、見事なリスクヘッジであると言える。 分散配置は銀行とおもちゃ屋の常道であり、シナジー狙いはアメリカな感じの攻方と言える。アジアンビューティな美しい混血がバンダイの基本スタイルである。 バンダイはそれまでの経験からも分かる通り、積極的にリスクヘッジ、つまり分散配置を中心としたラインナップをしていた。その一環がこのゲームである。
誉めるべきはその際の姿勢であろう。エヴァンゲリオンという題材を選んだ後、バンダイはガイナックスと協議を重ねながら、一年半程企画をつぶしたり、試作したり、またつぶしたりを繰り返している。 焦って結果を出さない、あるいは出す必要がない余力が、今のバンダイの強さを象徴しているように思える。 |