新世紀エヴァンゲリオン2 戦陣記

戦陣記(28)
29 エヴァンゲリオンの空間(1)
 さて、庵野監督の考えが分かり、基本設計を見直してEVAを再構成したらどうなるかという着眼点で事を進めたが、書き上げた設計図面(これを仕様原案という)を見てみると、これはユーザー一般が思い描くものとだいぶ違うと分かった。

 ここから先は程度問題なのだが、飛行機の設計もゲームの設計も、極端に先鋭化すればいいというものではない。かえって使いにくくなったり主要性能が下がるときがある。

 今回で言えば、ずいぶんエヴァと異なるものをエヴァと称して売れるのか、ファンが納得するのかという問題であある。
 ファン心理は複雑で、新しいなにかを求めてお金を払うのだが、とはいえ全然違うのが出てくると、怒りだすものである。我も、実際2520箇所も修正すると、うーんという気分になった。数字的には正しいが、答えは間違っている感じである。

 一般に設計者よりも一般ユーザーの方が先鋭化の度合いは低い。言い方を変えれば保守的であるから、設計者はコンセプトデザイン終了段階で、ユーザーのことを考えて先鋭化の度合いを落とすものである。
世に言う落とし所を見つける(悪く言えばデチューン)である。

 経験上、我の場合はこれ以上ないというほど先鋭化を落としても問題作扱いされるので、(デチューン前は宇宙人の作品よばわりされる)その我がうーんと言う程度がその時の状態だったと考えていただきたい。

 んじゃ、真エヴァンゲリオンはどうかという、ゲッターロボのような仮タイトル案が岡本氏から来るが、そういうからかいは無視し、再々設計に入ることにする。

 何が問題なのか。再検討する。
ここでようやく2回前の話とリンクするが、問題は複雑なのである。
 ユーザーだけでなく、当時のスタッフもそれぞれ考えているところはあり、これらは監督とまったくイコールなわけではない。全員考え方は微妙に違う。庵野監督を追いかけりゃいいというものでもないわけである。要はこれらの複雑な事象のセッションによって生まれた作品がエヴァなのである。

 いっそ今までの作り方に戻ってアニメを元に普通にゲーム作るかとも考えたが、これは思いとどまった。
 これまで失敗している方法をとってもしょうがないと、バンダイというか岡本氏に釘をさされていたのである。我が起用された時点でプロデューサーの作戦企図は明白である。普通は期待していない。

 その上で、我は当時のやり取りを頭の中で巻き戻して再現し、自分がどう思ったかをもう一度検証することにした。こういう時便利なのは良い記憶力である。電話帳を暗記する以外に使い道はあるのである。

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> その結果、分かったことはアニメというのは監督といえども完全にコントロールできるしろものでもないし、実は庵野監督にとって、エヴァンゲリオンは、必ずしも完璧な内容ではなかった、ということである。

> 今までのゲームは、TVのエヴァや劇場版のエヴァにこだわりすぎて、それを作った心やまなざしを忘れていたのではないか、と考えたのである。

 間違いはここだと推定した。我はここで興奮しているためにここで思考停止している。クレバーになりきれてない。
 庵野監督といえども万能ではないし、全部をコントロールしているわけでもない、これを全部コントロールすれば完璧になるというのが間違いその1。実はこの命題には解がない。客観的に見て完璧というのがありえないからである。あるのは主観内での完璧である。
 間違いその2は、それを作った心やまなざしを忘れて、である。本当はその上で、”それを見た心やまなざしを忘れてはならない”という一項を追加する必要がある。

 論理展開を再度やり直す。今度はほぼ正解と思われるところに行きついた。
'28' 2004.2.26.Thu. 

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