新世紀エヴァンゲリオン2 戦陣記

戦陣記(7)
7.基本計画(3)
 物事というものは、単純ではない。いくつもの要因が組合わさって一つの事象が生まれてくる。これは、ゲーム業界全土に及ぶ売上の低下においても同じである。
 この原因を突き止めようとすることは、どちらかといえば学問にあたる範疇である。 原因を調査する調査委員会に学者先生が交じっているのは、そのせいである。 学問と実践のはざまの領域で起きている問題に、ゲームは直面しているといっていい。
 この時のための我が生徒団であり、この時のために錬成されたアルファ・システムなのだが、一足先に我はこの戦場に突入することになった。


 さて、学問を実践する上で重要なのは、速度である。
 大昔、学問の探求がいまより急ぎでなく、道楽だった時代には研究に従事する上での速度は、大変遅かった。この上で問題は寿命、つまり研究者の命がつきることだ。と、まじめに言われていた。
 今はそれほどのどかではない。速度が命である軍事、そこから派生した社会学で組み上げられた商売に組み込まれたからである。

 学問と実践のはざまとは、言い換えれば正確性より速度を優先する学問と言える。この優先順位が単なる学問とは異なる。
 大体当たっていればいいというものなのだから、楽なものではあるのだが、学問好きはおおよそのんびり屋だから、楽ではないと言う研究者もおおい。

 さて、我の出番である。目の前には過去の世界があり、今いる世界があり、少々先の未来世界がある。 独りの人間が相手するにはちょうどよい大きさである。
 我は当たり前の人間なのでこの種のセオリーにしたがってアプローチすることにした。
 まず、アプローチを間接アプローチとした。
なんだかようわからん時と、細かいのが一杯ある場合には確率と統計を使えと、古来決まっている。
 マルサスさんありがとうと柏手をうち、次に進む。
この方法で物事はかなり単純化され、手元には何千枚かのグラフが残された。
 つぎに、この中で必要なグラフだけを削りだし、残りを捨てる。
オッカムのカミソリである。
 無駄を捨てれば残るのは必然だ。

 無駄ってなんだろう。目標数値は30万本なのだから、100万本売れているゲームの資料はいらない。10万から50万程度のゲームの過去現在の資料と、それに影響を与える資料があればよい。
 さて、ばっさり。

 カミソリはきらめき、多くの愛すべきバカゲーと、驚嘆すべき大作が削られた。
残る資料はざっと200枚程度である。
 この資料を並べる並べる。これから、グラフとグラフの関連性が見えるまで、壁一面に張られたこの線たちと生活するのである。
 頭の中には数式を、曇りガラスには指で数式を、数字の夢を見て、このジグソーパズルを覚えるところからはじめるのである。
 グラフの形が似ているだけでは、因果関係が成立する訳ではない。
 グラフにでない事象も考慮し、グラフをなんども別の方面から見て書き換え、重ね、時にはひっくりかえし、たまに美しいグラフを見に外界に行く。そうして似たような性質のグラフを、線を見つけるのだ。

 こうして天使を待つ。あるいは無駄と思われるファクターを削りだしする。駄目駄目だと勘がつげる時は、新たに資料を継ぎ足す。

 こうして、ゲームの売上が下がる原因を調査開始して1月、ほぼこうではないかという原因を捜し当てることに成功した。

以下、次号。
'7' 2003.12.18.Thu. 

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