師匠は、強くなった愛弟子に笑いかけた。

「いい女を捜せ。」

「それが強くなるための秘密ですか？」
「そうじゃ。」
「そーかー！」

　我らの主人公、大木妹人（おおき まいと １７歳男）は、目を輝かせて大声をあげた。

「分かりました。じゃあ探してきます！」

「ん。」

　大股で三歩進み、右に左に大きく振られる手が、エプロンをむしりとった。 見事に後ろに放り投げ、もう後ろを振り返らずに足速を上げ始める。 　飛んでくるエプロンをそのままのポーズで受け取ったアルバイトのバンドの兄ちゃんが言った。

「お前、仕事は？」
「やめます！」

　今時めずらしい大馬鹿もんである。主人公はこうでなきゃ。

「お、おい。」
「…見事じゃ。」
　ある種感動して老人はうなずいたあと、発作的に笑った。

「そうでなきゃな。よし、わしも老人ホームでがんばろっと。」

「うわぁ、なんだよお前ら！」


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