6.事件に関する非一般報告その2

「どうしたの。師匠。」
「うむ。」

老人は、しばらく言葉を考えた後、にっこり笑った。

「お別れを言いに来た。」
「え?」「やった。」

 アルバイトでバンドの兄ちゃんは杖で顎を突かれてもんどりうった。

老人ホームに行くことになってな。これでお別れじゃよ。」
なんで?師匠元気じゃん!」
元気な老人をいやがる奴もおってな。」
「やっつければいいじゃん。」

 老人は、瞬間だけ寂しい表情をしたが、次の瞬間には笑った。

「…いや、わしも新しい恋でも探そうと思ってな。教えた通り、木刀は振っておるか。」
「うん。」
「身体は出来つつある。あんまり教えてやることは出来んかったが、として最後に、一番重要なことを教えてやろうと思ってな。」
「…それってやっぱり、最後の奥義って奴?すげー!

 老人は、思わず笑ったが真顔で言った。

いい女を捜せ。いい女がいれば、とりあえず強くなるもんだ。誰よりもな。」

師匠も?」

そうじゃ!強さとは佳い女なりじゃよ。」



          
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