16.事件に巻き込まれた被害者1に関する報告4

 

いい女。いいひと。そうか、そうなんだ。

…そう。なんか、急に気分悪くなっちゃった。
「病院に行こう。」
「ううん、大丈夫。自分一人で帰れるから…」

 

悲しくなる と笑えるってヘンだね。

佳々子は下を向いて笑ってみた。ヘンな笑い、いつも悲しいときや困ったときに出る笑い。
 初恋は、瞬間的に爆砕 した。
顔をあげて、肩をあげて精一杯の笑顔を向ける佳々子

「…あのね、最後にきいていい? その人、どんな人?」
さあ。どんな武道知っているのかな。」

「え?」
「それよりどこに居るんだろう。やっぱり、日本にはいないかも知れないな。…まいった。どうしたの?」

初恋復活。

「なんか、急に気分が良くなっちゃった。」
「そう? でも、用心したほうがいいな。家まで送るよ。」
「う、ううん。でもちょっとここから離れるとまた気分悪くなりそうなぐらいだし…」
病院に行ったほうがいいよ。いや、医者連れてくる。」

 佳々子は、かなり必死に妹人の袖を掴んだ。がくん と引き寄せられる妹人

…え、あ、ううんっ、それほどじゃないと思うの。」

 表情を消した妹人の顔を間近で見て、佳々子は顔を真っ赤にして下を向いた。 手を放す。

「でも、予備校に行くほどじゃないけど。」

出た言葉は、凄く小さな声だった。



          
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