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1.SIDE−A
細い光の帯が、母にて広き泉に差し込んでいた。
岩盤のドームの隙間から、陽光が漏れていたのである。
ヘヒトンボが、連なって飛んでいく。 一人の男が、泉の端に、下半身を半ば沈めるようにしてうつ伏せに倒れていた。
泉に血を溶かしながら、眉をしかめ、意識を失っている。右手が、苔を掴んでいた。
大きな鈴の音が、した。 「委員長?…違う。」 そして妹人は、再び意識を失った。
泉で沐浴しようと、服を脱いでいた水の巫女セーラは、不意に岩場の辺りを見て目を大きく開けて凍った。 男が、居た。 倒れていたが。 水の巫女は、頬に血が一気に上がっていることを感じた。
この際、沐浴しようとしているところに男が近くにいることが重要であって、別に男が怪我をして倒れていることは大したことではない。
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