ガンパレードマーチ・外伝  
進む
トップへ

序幕

 荘厳なる夕日の元で、瓦礫の山の頂点に立つその少女は。

胸に下げた青い宝石を、そして巨大な手を振って、今にもその姿を消そうとしていた。

「あなたの名前を教えてくれますか。」
 善行は、言った。

 振るう手をとめたまま、その女は、口だけを動かした。
「我は名前のない男だ。知る必要はない。」
「…覚えていたいのです。私が抱いている、友情のような想い出のために。」

 名前のない男と名乗る女は、目を虚空に向けたまま口を開いた。
「…我は、反逆者。天と地の理に異を唱え、反逆するもの。」
「悪魔には見えませんが。」

「…されど神でもなし。」
 名前のない女は、最後に笑うと、手を振るって崩れ落ちた。

善行は瓦礫の山に上りつめ、昼と夜の狭間の、茜色の天空を見上げた。
 その名を呼ぼうと思っても、善行は名前を知らないことを思い知る。

 高らかに声が聞こえた。それは歌うような優しい声。
「時の終りでまた逢おう。友よ。英雄の介添え人。」


(C)2000SonyComputerEntertainmentInc  
進む
トップへ