ガンパレードマーチ・外伝  
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第4幕

 夏を待つ5月の朝。
整備学校生徒、原素子は、ファイルを抱えて足早に歩いていた。
「まってください。フランソワーズ先生。」
「待たないよ。急ぎな。」
 原は、もぅ、と肩を一瞬怒らせて、次の瞬間早足から、駆けるに足さばきを変えた。

「なんで、士官学校なんかに来なきゃいけないんですか。」
「…Aって、知っているかい?」
「…え?」
 見事な金髪を振って、フランソワーズは、目を細めた。
原が、追いつく。
「世の中にはね、ああいう男もいるんだよ。」
「昔の恋人だったんですか。」
 ファイルで、頭を叩かれた。
「なんでも恋愛につなげるな。バカ。」
「…いったぁ。」
「いくよ。 原も上級生になるんだから、もっと姉さんぶりな。」
「私はこう見えても、すごくお姉さんです。」

原は、笑った次の瞬間、廊下を歩いてくる士官学校の生徒の顔を見て、笑いをちょっと止めた。

センスのない眼鏡をかけた男とすれ違う。

 ぱっとしない人。と、思った。

善行は、女の嬉しそうな笑い声をきいて、あごをさすった。
いいなぁ。と思う。

そう言えば、最近女性と話もしていなかったことに気付いて、頭を掻いた。

(いけませんねぇ…このままじゃ首から下まで軍隊に漬かってしまう。)

「ミスター。こちらです。」
「はい。…ところで戦士、質問があるのですが。」
「なんでしょう。」
 若宮は善行を見た。

「さっきの女性達は、なんですか。女性士官候補生には見えませんでしたが。」
「はい、いいえ。女性がいたんですか。すみません。私は上から降りてきたので…」

若宮は善行を見て言った。
「幻ではないのですか。」
「いくらなんでもそこまで欲求不満ではありませんよ。」
 軍隊というものは、往々にして余りにも女性と会う機会が少ないために女性を神格化するときがあるが、この時の若宮は、まさしく女性教の敬謙な司祭と言った顔でうなずいた。
「まあ、時々、新兵に俺は女を見たと騒ぐ奴がいます。気持ちは分かりますが。」
「…いや…そうなのか、僕は。」
「そんなもんです。さあ、いきましょう。校長はお待ちかねですよ。」
「はっ。」


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