ガンパレードマーチ・外伝  
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第9幕

翌々日。

 真新しい喪服に身を包んだ善行は、眼鏡を指で押し上げて顔をあげた。
葬列に参加した士官候補生の半分は死をなんとなく悼み、残りの半分は休みが一日できたことを喜んでいるようだった。

「なんで自殺されたんだ?理由が分からん」
「女関係らしい。整備学校の女教官と一緒に死んでいたようだ」
「不倫で無理心中か。たまらんな」

 勝手な事を言いますね……

 善行は、亡き校長が在学生全員を覚えていた、でなければ自分のことを覚えている訳がないと周囲の人間に告げてやろうかとも思ったが、結局言うのはやめた。

 表情を消して、自身の眼鏡を押す善行の肩を、若宮が軽く触れた。
「戦って死ぬことを許されないとは、つらいものですな」
「若宮戦士、貴方は、どうせ死ぬなら戦場でと、思っているのですか」
「はい。一人で死ぬのは我慢なりません。どうせなら、敵をたくさん引き連れて、いい部下や上司に仲間達に囲まれて、死にたいと思っています」
「僕は生きることが、重要だと思います」
「戦場以外にも、いい部下や上司に仲間がいれば、そうかも知れません」

 若宮は、僕をなぐさめているのだろうか。

若宮の広い肩を見て、善行は思った。
若宮はしょげた犬のような雰囲気を、頭を振って振り払うと善行に言った。

「後で、喫茶店に行きましょう」
善行の表情が変る前に、若宮は付け加えた。
「会わせたい人がいます」 


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