フランソワーズは表情を消すと恐慌の流れに乗り、手荷物検査ゲートを抜けた。 後は、誰かのチケットを奪って消すか殺すかすればいい。
顔をあげると自分を見つめる目が、あった。黒服だった。 黒衣を着た男は、恋人に逢瀬した時のように微笑んだ。 「自殺された方がまだ生きておられるとは、困りますな」 「いや、いやよ」
人の流れに逆行しようとするフランソワーズは、10mほども行ったところで、後ろから肩をつかまれた。 瞳を大きく開けて、倒れる。