「現実が危ういことは、知ったな」 善行は、我に返った。歌は終り、夜の公園は再び静かになっていた。 「それだけしか泣かなかったことは誉めてやる。だが、幻獣と戦いはじめて五十年、陰謀に巻き込まれ、目の前に私が出現するこの期に及んでなお、現実がなどと言う愚かさはやめるがいい。善行。これからは、見たままに動け。それが、聡いやり方だ。生き残りたければ、見たままに動け。それに逆らうのは最後の最後、ただ一度だ。それで十分、事足りる」 少女は背を向けると、ゴミ箱に落ちた一輪の青い花を取った。一度振ると花は生気を取り戻した。 「これは報酬として貰っておこう」 巨大な図体を木立に隠して泣いている若宮の肩を、少女は叩いて行った。 |
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