ガンパレードマーチ・外伝

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第24幕
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 2月。善行は日本の参戦で持ちなおした戦線の内側で浸透を図る敵の掃討を行っていた。輸送車両をもたない歩兵、すなわち機動力のない歩兵に出来ることとして、当然あるべき一つの方策であった。

 双眼鏡を手にした善行が手を振ると、それまで誰もいないように見えた風景がにわかに動き出し、茶色と緑に擬装した兵が次々と現れた。

 善行は音もなく手を振った。

顔をペイントした若宮がうなずく。
 手信号を送る。

森の中から、車道に対して擲弾銃が猛烈に火を吹いた。
 擲弾銃とはずんぐりとした40mmの擲弾、所謂グレネードを連射する銃である。元は手榴弾を遠くまで投射する武器から発展したものである。
 善行の小隊に装備されたそれは、リボルバー式と言って回転式の弾倉を持っていた。
連射速度は遅く、射程も短いが歩兵小隊でも運用できるほど小さく、炸薬の詰まった40mm弾の火力はすさまじく、非装甲目標に対して制圧射撃するには最適といえた。

車道の上を列を成して移動するどこかユーモラスな幻獣ゴブリンの群が、大きく手を振って吹き飛ぶ。
 列を乱して戦闘陣形を取る幻獣達の背を狙うように今度は軽機関銃が射撃を開始する。
ゴブリンに守られるように中心にいたナーガという長蟲のような幻獣が、身体を長く伸ばし始めた。節々についた紅い瞳が開く。光を集め始める。

善行は若宮に視線を送った。
 若宮は鋭く立ち上がった。
「小隊!前へ! 強襲!」

 森から現れ、車道に面する斜面を滑り降りるようにして兵達が駆け下りる。
突撃銃を撃ちながら、肉薄する。

ナーガは紅い瞳からレーザーを放った。一瞬の光の後に森が焼き払われる。
しかし肉薄する歩兵には焦点があわない。

一際大きなナーガには手榴弾が投げ込まれた。

爆発。
 ナーガは爆発に浮き上がるように長い身体を半分に切断され、血を奔流のように流しながらのたうちまわった。その光景を見なれたもののように無視した兵達が、逃げ惑う残敵を掃討する。

20分ほどで戦いは終わった。
 善行の小隊が幻獣を殺し尽くしたのである。
捕虜を取ることも、取られることもないこの戦争において、それが戦いの終わり方であった。

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 善行は万が一にも敵の援軍が来ることを警戒し……幻獣は同胞意識が強い……、すぐにも部隊を移動させたが、その前に最低限のことはやった。
 戦果を確認し、記録し、幻獣ゴブリンが持っていた長い棒の先についた、人間の男女の首を取って、丁寧に埋葬させた。

「いきましょう」

 善行と小隊は再び森の中に消える。



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