そろそろ地球圏ですという機長の言葉で、立ち上がる少佐。
乗り物好きな少佐は、シャトルの降下操縦を見学させてくれと頼んでいた。

「じゃ、ちょっと操縦席で副操縦士の真似でもしてきます」
かれんちゃんが声をかけた。
“はやくフル・サイボーグになって、私たちの恋人になってください。少佐だったら私、歓迎します”
 少佐は少々頬を赤くする。軍用アンドロイドは記憶を共用する。実質何万体とお付き合いすることになるんだろうなと考える少佐。
「地上におりて、アクロやってきつかったら考えとくよ」
そう言って少佐が背を向けると、もう一人の人物が、光国人の大使が口を開いた。

<ああ、待ちたまえ>
「なんでしょう」

現役軍人らしく小気味よく振り返る少佐に、光国人はみじろぎもせず、しゃべりだした。

<君たちと、その過去の人々の差だ……これは私の個人的感想だが、やはり、どこかは似ていると思う。300年近く前の時でも、最終的には貴殿たちは、自分達だけの力で、勝った>

「……そうですか」
 少佐は少し頭を下げた。
光国人は、そのまま言葉を続ける。

<私を異星人と長らく気づかなかったところもそうだな。わかっても、態度を決して変えなかったところも>

少佐は、はじめて嬉しそうに笑った。
「ええ。そこんところだけ同じなら、俺たちはきっと、ずっとうまくやれますよ」
<そうだといいな>

光国人は、昔笑っていた頃を思い出して、口の端を少し動かした。

<了>


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