“大切な事は想う事”
“想ってそして願う事”
“遠い貴方に幸あることを”
“意味あるなしは関係なく”
“心が傍にあるように”

そして目を細めた。祈るように。

“天に手を差し伸べて 風を待とう”
“星がはじまりおわっても この気持ちに果てはない”
“僕の心には花がある 貴方とゆれたあの時の”

“大切な事は想う事”
“想ってそして願う事”
“遠い貴方に愛あることを”
“得あるなしは関係なく”
“想いが傍にあるように”

 窓辺で歌う少佐に頭にジュースの缶が当たった。ひっくりかえった。
庭に、ピンク髪の女が立っていた。2階を見上げて大激怒している。

起き上がった少佐は窓から見下ろす。見知った顔だった。
「遼子じゃないか」
 ピンク髪の加藤遼子は、泣きそうに怒った。
「かわいい従妹で幼馴染がずっと呼びかけているのに!なんやその態度は!」
「かわいいかどうかはともかく、そりゃ悪かった」

 あ、涙出た。遼子は旅行用のバックを重そうに持ったまま背を向けて歩き出した。

「か、帰る! 帰るっ!」
「まてまてまて!」
 2階の窓からあわてて飛び降りる少佐。
飛び降りて遼子の肩をつかんだ。

「はやっ!」振り返って驚く遼子。
「飛び降りたんだよ」そういう反応するかという感じで、少佐。
「土足か!」
「使い方違うぞ」

遼子はひるんだ。言葉ではなく従兄の声が、覚えて、想っていたより、ずっと優しかったから。

「人が、何のために世代を重ねると思ってるんだ」
「なんやねん、それは」
 2歩下がる遼子。顔が赤くなっていることに、気づかれたくなかった。
「最短で逢いたい人にあうためだ」

そう言って小さな花が咲いたような笑顔を見せたタキガワに、加藤遼子は顔を真っ赤にして
「はぁ!? 宇宙いってる間に頭おかしくなったんとちゃうか?」
と、言い返した。

少佐は優しく笑った。
「そうか? ネーバルウイッチにはえらい受けたんだが」
「……それ、女?」
「まあ。たぶんそうだろうな」
そう答えたところで少佐は盛大にひっぱたかれた。

今度こそ本気で帰る遼子。涙浮かべるどころか、泣いた。

<了>


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