ジョージは振り返り、太陽系連合の旗を見上げて思う。
ロンリータイムズを越えてゴージャスタイムズに足を踏み入れるときに人知類が選んだこと。それは自分だけがよければそれでいいと思うことの否定。

 偉大な先祖達だと、心の底からジョージは思う。老いてなお、胸が熱くなる。
その流れに連なることを誇りに思う。

ジョージは口を開いた。
(だがこのままでは、いかん。志願制である以上、このままでは友情あふれたやつから順に死んでいく。そのうち、銃後には自分のことばかり考える奴ばかりになる。我々が受け継いだ一番大事なものが、友情がすりつぶされる。それではいかんのだ)

少佐は取り込み中である。思ったとおりのことを言った。
(政治家になりゃいいじゃないですか。親父(おやじ)さん)
(軍人が政治家やっていいことになったためしはないぞ)
(元部下で今取り込み中の少佐に愚痴たれるよりはきっとマシですよ)

 それはその通りだと、ジョージは思った。ジョージはこの時から、政治家になることを志す。大義のためであれば、多少のことは目をつむるべきだった。

ジョージは微笑んだ。
少佐、君はバカで間抜けでいつも貧乏くじを引いているが、だが、だからこそいつも正しいことを言う。心の中でそう思った。

 だが、嫌味をいわれたままでは面白くないので、礼を言わずにただちに反撃することにした。
(結婚はやめとけ。軍人は結婚しちゃいかん。奥さんが不幸になる)
(……そんな関係じゃないですよ。相手は……その、親戚です)
(ふん。お前のような人形飛ばすしか芸のない奴を好いてくれる奴なんか親戚ぐらいしかおらんだろうが。従妹か、従妹だな。お前のパソコンの壁紙になっていた)
(電話切ります!)
(おお、切れ、俺の用件は終わりだ。そしてふられてこい)

本当に電話は切れた。タキガワは姿を消した。
頭をかくジョージタフト。

<了>


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