(戦争をやめたい)
(同感ですが、難しいでしょうな。我々は勝ってます)
(勝ってるうちだからやめられるんだろうが)

ジョージはプロの博徒のようなことを言った。そのまましゃべる。
(そもそも何のための勝利だ。BALLSだって太陽系の開発を終えるまでには二百年かかる。次は誰も領有してないアルファケンタウリだ。戦争なんかしなくてもな、かまわんのだ。だれにとっても)
少佐は元々、その手の話は好きではない。つい、口を開いた。
(異星人にはグレートワイズマンの遺産獲得という意味があるでしょ)
(そんなものになんの意味もないことは、今我々が証明しつつある)

腕を組む少佐。背中に女がしがみついているのを感じる。
(でも戦争は終わらない。なぜなら我々は友情をしめしていない)

 今、戦争を続けているものの正体は友情だと、少佐は思っている。
友情が戦争を必要以上に続けさせている。

 元からその傾向はあった。最低接触戦争勃発直後、最初太陽系最外延まではAI知類だけが行く予定だった。重量的に考えて、それが一番有利だったからだ。
だが、そうはならなかった。多くの知類、中でも人知類が大激怒したためである。
最後には多くの人間の軍人が……その中には若きジョージ・タフトも含まれる……が自分の階級章をむしりとって個人の資格で戦うと言い出した。
それぐらい誰かだけに不幸を押し付けることに抵抗する者が多かった。

 ゴージャスタイムズはじまって百七十年、育てあげてきた、種族や特性を超えて育て上げられた、それは友情だった。 世代はかわり顔ぶれはかわっても、育てあげられてきた友誼(ゆうぎ)は太陽系全域を覆い、それが未曾有の戦死者を今も量産しつつあった。
 誰も彼もが友誼(ゆうぎ)のためにならと銃をとった。
ネーバルウイッチが他種族を奴隷にしてると知った後は、なおさらだった。
騒がしくも輝かしい、豪華絢爛な時代にどっぷり首までつかってそれまでの人生をおくってきた多くの者が、心底恐怖したためだった。
いまさらロンリータイムズになんか戻れるか。多くの者がそう思った。

 友情は誰も断ち切れない。それはそうだ。このジョージ・タフト中将様も、戦友だけは見捨てられなかった。ジョージはそう思って心持ち背筋を伸ばした。
それで最愛の妻や息子を失っても、また同じ選択をすることになったとしても、やはり俺は同じ事をするだろう。なぜならそれが世界の選択だからだ。血反吐(ちへど)も吐くし悲しみに押しつぶされても、やはり同じ事をするだろう。誰かがそうするように、自分もまた友誼(ゆうぎ)のために銃を持とう。


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