水の巫女は、怒った。

「なんでそんな無駄なことをしているの? ばあやから聞いたでしょう? フェンサーになるには、何年も掛かるのよ?」
「いつか、役に立つかも知れない。俺は…

 固定された剣を右に左に払いながら、妹人は言った。

「強くなりたい。」
「…ふん、ふんっ。そうでしょうとも、この恩知らず。お調子者。

足腰が強靭なのが助かったわ。基礎はほとんど要らないでしょう。次に行きます。」
「お願いします。」

 大きな音がして、水の巫女は部屋から出ていった。ドアが揺れている。

「…ごめんなさい。」
「いえ。」
本当は、あなたに、水の魔術を見せたかったのでしょう。あの子は、それしか知りませんから。」
「…そんな暇はないな。」
「そうね。…でも、本当に練習は無駄になってよ。いやそれどころか犬死にかも知れない。どう考えても。」
「…」
「なに?」

 口の中で師匠の言葉を反復しながら、妹人は、顔をあげた。これが二度目だ。

「いや。練習をしよう。」
そうですね。それから一つ注意しておきますが、あなた怒ったり、本気になるとぶっきらぼうになってよ。」
「…すみません。」
「いえ、嬉しいわ。さあ、始めましょう。」



          
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