11.

 翌日。

水の巫女は、姿を見せなかった。

…なにか、悪いことを言ったかな…
セーラ様なら、もう二度と会わないと。このお調子者、失礼なひと、破廉恥者…あと、いくつかあったような。」

年を経た女官は、皺の出来た口元を微笑ませた。攻撃を突き出し、妹人に払われる。
手を休め、妹人は、自分の腕を見ながら首を振った。手は、淡く、輝き始めていた。 もう一度見れば、いつも通り。

かまって欲しいのですよ。」
「…そういう風には、見えなかったけど。」
「…未熟なのは、剣だけではなさそうね。」
「そう思います。」

水の巫女は、師匠が探せと言っていた佳い女なのだろうか。妹人は考えて、頭を振った。

「そんなにになるなら…」
いえ、練習しましょう。」

 剣を取りなおした女官は、その手を止めて顔をあげた

また来たのね。」
が、ですか。」
「不遜にして汚らしい汚水に劣る男。ゴダロ。何代か前に水の巫女を獲得して、権勢を欲しいままにした大貴族の末裔。…今代の水の巫女を手に入れようと」
に出る剣士ですか。」
「いいえ、まあ彼の突き出たでは無理。…でもね、無理やり法を変えて、今年から代理剣士を出せるようにしたの。それで立候補。」
「…」
隠れておいてください。私が応対しますから。それから、その怒った顔を、間違っても見せないように。ここは男子禁制ですからね。」 

妹人は、じゃあそのゴダロというのはいいのかと思ったが、言うのをやめた。年を経た女官露骨に嫌な顔をしていたからだった。頭を下げて、壁近くの柱の影に隠れる。



          
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