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14. 「おやめなさい。あなたの腕では、助かりませんよ。」 年を経た女官は、静かに言った。誰も起きていないくらいの朝だった。
その言葉を無視して、レピアー、細身の剣が腰にさされる。 「だからといって、戦わないのは卑怯だな。」 「教わったことがある。どんなに力があろうと、立ち上がらねば何もないと。」 どんなに力がなくても、立ち上がれば、何かが起きるかもしれない。父はそう言った。 壁にかけてあるギザギザの短剣…ソードブレイカーを見て、妹人は言った。 「これを、貰っていっていいか。」 妹人は笑った。 「俺と同じだよ。弱いから、短いから、時代にあわないから。だが、だからといって負けたわけじゃない。努力したのは無駄じゃない。この目が開いている、指が動いている、その限りは。」 背を向けて歩き出す我らの主人公、大木妹人に向かって、年を経た女官は深く頭を下げた。 「我らの水の巫女を、いえ、一人の娘をお願いします。」
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