14.


「おやめなさい。あなたでは、助かりませんよ。」

 年を経た女官は、静かに言った。誰も起きていないくらいの朝だった。 その言葉を無視して、レピアー、細身の剣が腰にさされる。
 その姿を入り口からの影にして、我らの主人公、大木妹人は静かに口を開いた。

「だからといって、戦わないのは卑怯だな。」

「教わったことがある。どんなに力があろうと、立ち上がらねば何もないと。」

 どんなに力がなくても、立ち上がれば、何かが起きるかもしれない。はそう言った。

壁にかけてあるギザギザの短剣…ソードブレイカーを見て、妹人は言った。

「これを、貰っていっていいか。」
「なんのにも立ちませんよ。」
「…そうかな。」

 妹人は笑った。

同じだよ。弱いから、短いから、時代にあわないから。だが、だからといって負けたわけじゃない。努力したのは無駄じゃない。このが開いている、が動いている、その限りは。」

 背を向けて歩き出す我らの主人公、大木妹人に向かって、年を経た女官は深く頭を下げた。

「我らの水の巫女を、いえ、一人の娘をお願いします。」
「頼まれるよ。」



          
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