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16.
「来ませんね。どうしたのでしょう。」 年を経た女官は、正装して、特別な観客席に座らされた水の巫女を見た。 夜には、自分はもう誰かの物になっている。そう思うと、心が押しつぶされそうだった。 「…来るわけないじゃない。…来るわけが。」 「分かってるわ。…たとえ来たにしても、…だめよ、いくら頭が悪くても、あの弱さでは、それぐらい分かるでしょう?」 「あのお調子者は、私が治療したのよ。また怪我をして、ううん、死んだりしたら…、だいたい…だいたい…」 下を見る水の巫女の隣で、外を見る年を経た女官は、静かに口を開いた。 「…分かりませんよ。少なくとも、まだ、時間はあります。」
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