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20.
我らの主人公大木妹人は、頭を下げると、軽い金属音を立ててレピアーを抜いた。 「それがお前の母国の礼か。変わっている。」 目を開けたその時には、妹人の表情が、雰囲気が一変する。凛々しい横顔。もはや迷いも悲しみも気負いもなく、誰かのために剣を構える凛々しさよ。 水の巫女は、その横顔を見て彼が約束を必ず守る気であることを知った。 椅子から立ち上がり、みずからの胸元を握り締める。 「いい表情だ。誰もが出来る顔じゃない。」 剣士は優しく言った。同じく金属音を立ててレピアーを抜き、胸元に引き寄せて礼をする。そして、剣を構えた。 「本気で行こう。」 妹人はもはや何も言わなかった。 右手にレピアーを、左手にソードブレイカーを装備して体を斜に向ける。 攻撃の投影面積を最小にして。左右に上体を動かして相手の突きを避けるためであった。 これが剣道なら切るために、ただ一閃するために相手に正対するはずだ。 「…ソードブレイカーとは、古い武器を。」
妹人は誘いには乗らなかった。何度も考えた。何度も。
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