−我は鋼鉄。人と幻獣の血と汗と涙で鍛えられし世界の守護−
佳々子は、その瞬間、たくさんの白衣の人々と見たこともない獣達が、この機械を建造するために集まっていた光景を見たような気がした。 決意と希望を共に秘めたいくつもの世界の何千の人々が、危険を犯して建造する場面を見た。 最後に、コクピットの中に、文字と言葉と言う心を封じていくのを。
「…なに、この映像は。」
だが、それは幻だった。佳々子はただ一人、コクピットに座っている。
「…はじめてじゃないの…ここは。」 つぶやいた佳々子は、鬼魂号が動き出す音に気付いて、考えるのをやめた。 席から立ち上がり、コクピットの壁を叩いた。 「動かないで! 明日、明日になったらキミを修理してあげられる場所を探すから。」
鬼魂号は、動くのをやめた。
小さくためいきをついて、佳々子はコクピットの席についた。
目をつぶる。