2.
駱駝鳥を駆る一人の老婆は、手綱を引いて、厚い布のフードで覆った影から目を細めた。
青い光。そして、遠くの砂丘の盛大に上がった砂煙を見る。
掛け声をかけて、駱駝鳥の横腹を叩いた。
足跡を残して砂丘をかけあがる駱駝鳥。
巨大な砂のクレーターの底に、一人の小村 佳々子がいた。
老婆は、駱駝鳥で駆け寄りながら、フードを外す。
「あなた、…違う。」
「そう、がんばるしか…はい?」
振り向く佳々子は、老婆に気付く。
老婆は、肩を落した。
「…こんなところで、どうしたんですか。そんな軽装で。どこの洞の方?」
「は? ええと、洞ってなんでしょう。」
「…あなたが黒い髪だったらよかったのに。」
「はい?」
「…日中にそんな格好では、1刻もしないうちに火傷しますよ。街まで案内しますから、こちらにいらっしゃい。」
「ほんとですか。ありがとうございます! 助かります。」
何度も頭を下げる小村 佳々子を見て、老婆は皺深い笑みを浮かべた。
「ふふふ、元気があっていいわね。わたしもお暇を出されるまでは、ずっとあなたのような方のお世話をしていたのよ。…わたしのことはばぁやと呼びなさい。」
「あ、はい、ばあやさん。」
老婆は、昔を思い出していた。
|