ガンパレードマーチ・外伝
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 善行は、こりゃ何か勘違いされたかなと微苦笑して口を開いた。
「道に迷われたのなら、案内申し上げますが。」
「…いえ、そういう訳ではないんですけど。」

「そうですか。」
「なにか、あの訓練で問題があるんですか。すごいなぁと思ったんですけど。」
「いえ、自分も訓練したいなぁと思ったんです。今、時間が空いちゃってね。」
 善行は正直に言った。

「何かしないと、気が済まない。」
「分かります。…私も、そうですから。頑張らないと、みんなに置いて行かれそうで。」

 善行は少女を見て、少しだけ笑った。
若宮戦士、幻をみていたのはあなたのようですよ。
「少し、違うと思います。僕の場合、元々面倒くさがり屋だったはずなんですが。…どうも性根まで軍人になってしまったようで。」
「きっと好きだからですよ。好きなものには、一生懸命になりますから。」

(いいや、違うね、軍人の場合、単に死にたくないからさ。)
 善行は眼鏡を押して照れる表情を隠した。あまりにも人間的にどうかという考えに、自分で恥ずかしいと思ったのである。
 それを少女は、何か勘違いした。
口に手を当てて笑い、微笑む。

「かわいい!」
「…勘弁してくださいよ。こう見えても、もう少しで一人前の軍人なんですから。」
「だって…そこで照れるから。なんで、そこで照れるかなぁ。」
「人間だからですよ。」
「?」

 善行は、目の前で少し髪をゆらして首をかしげて微笑む少女に、本音を言う愚を悟った。
説明するのが面倒くさかった。軍人でない人間に、軍人の心を説明しても仕方ない。
「…ええと、つまり、好きなものを好きだというのは、難しいのです。」
「ふふふ。ずいぶん、損な性格なんですね。」
「そう言われるのははじめてです。」


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