第11幕
「AA、ゴミの処置は終りました」 「よろしい、再生して駒にする。調整しておきなさい」
低い男の声で、その少女は言った。 風邪に髪をなびかせて、涼やかに手を動かす。 足元に二匹の仔猫が走り込んできた。純白と漆黒の仔猫だ。
「あの地べた這いに、ご執心のようですが」 「懐かしいからな」 「は?」 「あれは今、自らを包む運命を忘れ、全てをあの女に捧げている。ただ笑顔を見る為に。……覚えているぞ。豊かな可能性を持つも、中にはなにもない。 献身が生む力、覚えている」
少女は、車に乗り込むと運転手に言った。
「それは赤。赤にして深紅だ。美しいアラダだった」 「ルラダンが他にも?」
「いや、おそらくはグライダーだろう。ゲノムの充足率が低い」 「いかが、しますか」
少女は脚を組みながら、表情を消した。 膝の上に白と黒の仔猫を乗せて。