ガンパレードマーチ・外伝

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第13幕

 善行は若宮に笑いかけながら、原のために生きたいと思った。

「しかし、どうにも解せません。なぜミスターを狙う必要があるのでしょう」
「理不尽と言うものは、そういうものでしょう」
「自分は憤りを感じます」
「そうですか」

 善行は、若宮に笑いかけた後、涼しげに言った。

「理不尽なことに対する怒りはないですね。元々社会も国もこの世界も、理不尽だと思っていますから」

 善行は、若宮を片手でいなすと、思うことを言った。
「そもそも僕が軍人になって敵を殺す時代で、20歳の若造である僕が何人もの大人に死ねと命令する世界です。そこに正当な論理があるわけがないと思います。正当であってたまるものかってね。だが世界がそんなものだと言われれば、納得もします」
「ミスターは立派な軍人です。貴方の振りかざす正義の為に、部下は死力を尽くして戦うでしょう」
「そうですね。僕は骨の髄まで軍人ですね。最近、そう思っています。兵を操って敵を殺すのを楽しみにするような人間が体制に与するとしたら、そういう生き方しかない……でもね」

唇の感触を思い出し、善行は微笑んだ。
 原でないといけないのかと言えば、そうではない。だが自分が人間でありつづける為に、自分の為に戦うという理屈だけはつけたくなかった。女の為に生きるというのなら、まだ自分を許せるような気がした。 

「だがそれでも、生きたいですけどね。相談と言うのは、今日あった、妙な人物についてです」
「デートのお相手でしょうか」
「はい、いいえ、その前に僕に接触してきた人物です。僕の境遇を良く知っているようでした」
「敵ですか」
「敵ではないと思いますが、味方かどうかは自信がありません」

 善行は、息を吸った。眼鏡を押す。善行はいつものように自己嫌悪した。
味方ならもう一度来る、好意的中立ならここで終る。敵なら最初からああいうことはしない。僕は味方だと考える。

「僕の相談と言うのは、その人物と接触することです」
「捜索済ですか」
「いえ、貴方の教育の賜物ですよ」


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