中井戸は拳を握り、力強く言った。
「そこで我々“ネーバルウイッチを保護しよう会”は義挙を起こすことにしたっ。彼女達に新しい知生を与えるのだ」
沸き起きる拍手。こめかみを抑えるエリザベス。死んだ亭主を思い出した。

横を見る。控えめに言ってエンジンついているものを動かす以外には芸のない若者だった。こんな奴をあえて伴侶に選ぶなんてどんな物好きかと考える。
「それでなんでよりにもよってコイツなんだい」
 今まで会話に入り込めなかったタキガワも何か口をはさもうとした。直後にエリザベスにドロップキックを食らって障子を突き破って中庭に転がっていく。

 涙流しながら顔を出すタキガワ。
「……なんてことするんですか。まだ何にも言ってないのに!」
「いや、なんというか、女の勘」

不安そうに周りを見るアプルの肩に手を乗せて、中井戸はうなずいた。口を開く。

「彼女には、幸せになってもらいたい。この最低の戦争は最低ではじまったが、仕舞まで最低だったとは、思いたくない。タキガワ少佐には人気がある。種族的な偏見も、まったくない。なによりも」

 タキガワは機体を操縦する腕がいいと言葉を続けようとして、エリザベスから飛んで離れた。エリザベスは舌を見せている。

震える中井戸。
「続けていいか」
「どうぞ」 遠くからタキガワ。
「悪かったね」 乱れた髪を直しながらエリザベス。

 中井戸は不安そうに自分を見るアプルを見て優しく言った。
「なによりも少佐はへんな存在に限って好かれる。そう言う珍しい性質を持っている」


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