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場面は戻る。
タキガワ少佐はへんな存在に限って好かれるという言葉に、タキガワ自身がそりゃないでしょと言う前に、エリザベスは行動していた。具体的に言えばドロップキックで中井戸を吹っ飛ばし、軍人達に殴りかかって大乱闘である。
「私の、何が!」
3人まとめてふっとばすエリザベス。恐ろしいパワー。
「何でこの人が怒るんですか!」
文句を言う中井戸に、「朝弱いんですよ」とタキガワが答えた直後に、タキガワはエリザベスの芸術的なスープレックスで地面に沈んだ。もはや地獄のような有様である。
アプルはオロオロする。
「あ、ああ、なにか大変なことにっ」
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一方その頃。
「こらー、起きろー!」
新井木は返事のないドアにそう言った後で、ドアをにらみ、次の瞬間にパンチ一撃で突き破った。
大股で歩み寄り、布団を剥ぎ取った。泣いている遼子を見下ろし、そして言った。
「1分やる。それまでに決めて、服を着替えろ。化粧は移動中にやる」
「あ、あんたダレや」
髪が乱れている、遼子。自分を守るように胸元に手をやって、そう言った。
少し長くなった髪を振る新井木。
「アンタの先祖に世話になった者よ」
そしてしなやかな腕を腹にあてて、言った。
「この腕やお腹の一部はね、アンタの先祖が、ホンッ当に苦労して集めてきた肉やジャガイモで出来ているの。説明以上終わり。私が行動する理由はそれで十分でしょ。さ、バカな男押し倒しにいくわよ」
男という言葉に、遼子は反応した。
「お兄ちゃんのところに……?」
「他にいるならそこに行ってもいいけど、違うでしょ。だったら悩む必要はない。戦争は速度よ。誰よりもはやく致命傷を与えれば、それで十分最強になれる」
遅れて、押し倒すと言う言葉の意味が分かって、遼子は顔を真っ赤にした。言う言葉をなくした遼子のパジャマを新井木は剥ぎ取りながら、奥手な女を焚きつけるのが自分の仕事かと、思った。
「あーもうっ、本当に昔から変わらないなあ。いいっ? 生き物はね、頭悪くていいのよ。愚痴を言うのと後悔は、死んだ後でも十分。だから急いで。……もっとも死んだ後なんて言うけれど死後の世界なんかみたことないけどね。ま、なくても構わないよね、そんなの。一生懸命、生きさえすれば。……ところで」
遼子を見下ろして、新井木は言った。
「パンツ、かわいすぎるんじゃないの?」