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 場面はまた戻る。最終回なので忙しいのである。

エリザベスは、取り押さえられていた。9人がかりで外に連れ出されてる。
「だから私は普通だぁ!」叫ぶエリザベス。
「ドウドウ」 押さえながら連れて行く軍人達。

すみませんと頭を深く下げるタキガワ。
咳払いする中井戸。

「あー。その、まあ色々あったが、事情はわかってくれたと思う」
「なんとなく」

 落ち着かなさそうに左右を見るアプル。小さな手で、中井戸の袖をひっぱった。
それを払いながら口を開く中井戸。
「教えたとおりに」

アプルは背筋を伸ばして慣れないのか顔を真っ赤にして言った。
「あ、あのよろしくお願いします」

3秒たって大事な事が抜けていたことを思い出し、アプルはあわてて頭を下げた。

席を立つ中井戸。アプルの背を押してタキガワに押し付けた。表情を見せずに、口を開いた。
「では自分はこれで。どうか少佐、彼女をよろしくお願いします」

 二人きりになった。よろしくといわれてもなと、頭をかくタキガワ。
「よ、よろしくお願いします」
緊張して言うアプルの顔をみつめて、目にかかりそうな前髪をはらってやる。

瞳の奥を見て、そして不意に笑った。
色々な知類を骨抜きにしてきた、無邪気な笑いだった。

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一方その頃。

遼子は身体を震わせた。時速150kmの車中であったが、震えは別の理由のものだった。
「なに?」
「嫌な予感がする」
「タクシー、速度あげろ!」

 タクシーは、このお客さんにはつくづく縁があるなあと考えた。遅く走ったり急いだり、大変なんだなあと考え、それで速度を、もう少しあげることにした。


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