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/*/ 「これで終ると思うか、バット」 後方から空気をつんざく音。ミサイルだろうか。 目の前の道を知り合いが通っていたのだった、。 大猫を抱いたののみが、小走りで走っていた。 時が止まる一瞬。 舌打ちをした中村は股間から靴下を取り出すと、伝説の一年靴下を嗅いだ。 そして飛んだ。空中でののみをキャッチし、八回転して着地する。 ののみがびっくりした顔で中村を見た瞬間、中村は善行の靴下をののみにつきつけた。 気を失ったののみを抱いて、中村はつぶやいた。 岩田が飛んで来た。軟体動物の動きで、続く爆発を避けながら走ってくる。 「俺達には誇りがある。ハンターとしての。貴様の誇りはどこだ、バット。それともどこかで無くしてしまったか。……俺達は、
靴下以外は何も奪わないゆえに誇り高いんじゃないのか? たとえ万金が積まれていても! その隣にある靴下を選ぶ!
それがソックスハンターだ!」 岩田はひるんだ表情で黙った後、長い青い舌を見せながら叫んだ。 岩田はすれちがいながら、蛇のような長い手を中村の肩にあてた。 「はやくその汚い女を安全なところにやりなさい。私が靴下を狩るついでに、時間を稼いであげましょう」 そして中村と岩田は、同時に飛んだ。次の弾道ミサイルが飛んで来たのだった。 更紗に突撃する岩田に手信号を送り、再度飛ぶ中村。 「ここは俺達ピエロの舞台だ。お客さんが舞台にあがっちゃ困る。……ここは、トラも出れば炎も出る。 ナイフも投げれば空も飛ぶ。そんなところだ」 背中に刺さった破片を引き抜き、投げ捨てる中村。背中で猫が鳴いた声を無視して、ブータの額を揉んで中村は口を開いた。 そして靴下を握って飛んだ。豚だから飛んでいるわけではない。あしからず。 中村は爆風を両手を交差させて防ぐと、炎の中に着地した。 「立て、バット。……第2ラウンドだ」 岩田は爪先だけを使って寝ている状態から立ち上がった。爆風になぎたおされて倒れていたのだった。
セクシーポーズを取る。 炎の中には女がいる。靴下に情人を取られた、復讐の鬼が。更紗は無線機を投げ捨てると、巨大な火炎放射器を取り出した。
どう考えてもマジ殺モードである。 だが、しかし。 二人合体のセクシーポーズ。 「ええい。この本物変態!」 中村と岩田は同時に口を開いた。薔薇の花と靴下がくるくるまわりながら虚空に落ちていく。 「今だ! バットぉ!」 中村と岩田は左手を交差させた。お互いの股間に手を入れる。 「フフフ、どうしました?」 さも汚いものに触ったかのように、岩田は手を一旦出してひらひらさせた。再度中村の股間に手を突っ込む。 二人は同時にお互いの股間から装甲靴下を出した。 「装甲で炎が防げるかぁ!」 更紗は引き鉄を引いた。炎の奔流が二人のハンターを包む。 否。 更紗は上を向いた。重い装甲靴下を捨てて身軽になった二人のソックスハンターが手を繋いで空を跳ねている。 そして二人で円を描きながら、色とりどりのいくつもの靴下を広げ、パラシュート代わりにして落下してくる 。悪夢のような光景。 更紗は舌打ちして火炎放射器を上に向けた。引き鉄を引く。 「甘い」 二人のハンターは空中で同時に靴下を穿き直した。 「ハンター!」叫ぶ更紗。炎が中村と岩田を包んだ。 「その名前、極楽に行っても忘れるな」 炎の中から靴下が現れる。否、足もついていた。そのまま、更紗の整った顔面に直撃、そのまま二人同時のソックスキックで 更紗を炎の中に叩き込むソックスハンター。 髪と眉毛をちりちりに焼きながら、中村と岩田は立ち上がった。 「フフフ。丁度パーマをかけたかったところです!」 隣を見る岩田。モヒカンの中村は肩をすくめた。 「髪型が変わりましたね!」 隣を見る岩田。七三分けの中村は肩をすくめた。 「どうした?」 岩田は叫ぶ。 そして二人は同時に股間から靴下を引き出した。向かい合う両雄。 もはやツッコミがいなくなったギャグの世界で、二人の変態が踊り出す。 /*/ そして中村と岩田は、笑いあった。暑苦しい笑顔だった。 「フフフ、いきますよ!!」 ソックスハンターが走り出す。天上を翔けるように、軽やかに。 二人は同時に手を出すと、お互いを靴下で攻撃した。 大手を振って二人のソックスハンターは走る、走る。走る。 「同じ趣味でなかったら、いや、言うまい、ソックスハンターでなければ出会うこともなかった」 二人は同時に口を開いた。お互いに靴下をぶつけ合いながら。 そして二人は拳を交差させた。拳には靴下が握られている。拳に破壊力があるのではない。靴下に破壊力があるのだった。 「それは臭いので有名な整備の原の靴下」 「いい趣味だ」 二人はあまりの匂いに鼻血を出しながら笑った。再度拳を交差させ、ぶっ倒れる。あがる水柱。池が血の池になる。 最後の水浴びをしているカバは、迷惑そうに口をあけた。否、靴下の臭いにまいっているのであった。 鼻は潜水するときのように閉じている。カバは口で息をしていた。 カバ以下、否、カバよりソックスハンターが上であることが証明された瞬間である。 その前で岩田は腰まで濁った水につかりながら、攻勢を強めていた。 いかん。血が足りなくなってきたと中村は思った。意識が遠のく。 「俺が主人公の回だろうが」実も蓋もないセリフである。 岩田は女装した。 おさげ髪のかつらを被り、メイド服と大型丸眼鏡を装備する。 「ここから先は私がヒロインよ!」 「男でもヒロインをはれるガンパレの世界観の隅をついた見事な攻撃だ。これを否定することは作品を否定する!」 ついにカバは泡を吹きはじめた。中村と岩田のセクシーデンジャラスウインドウの中に収められた靴下から靴下のエキスが 染み出してきたのである。 カバが泡? 中村は歯をくいしばった。 「フフフ、死んじゃって! バトラぁん! 伝説の靴下と共に!」 逃げる中村。 「さっさと死になさい!貴方の墓標は靴下で飾ってあげるわ!」 カバを中心に時計周りにまわる二人。いや、反時計周り、いやいや時計周り。途中で岩田を中村が追いかけたような 気もするが、気にしないでお話を進めよう。ついにカバ越しに二人が立つことになった。 「フフフ、逃げられないわよ!」 中村は笑った。そして、伝説の一年靴下をカバに投げつけると、最後に残った力でカバに体当たりした。 靴下を鼻にあてられ、よろけるカバ。ついに口から泡を吹ながらぶったおれる。…岩田の方へ。 中村はよろけながら、天を見上げた。空に穴は開いてないかと。穴はなかったが、中村は笑って言った。 倒れたカバが動く。水飛沫。 岩田はカバを両手で担いで仁王立ちになった。 「ばかな!」 岩田は、動きをとめている。 中村は黙った。 動きをとめた岩田の眼球の上を、額から零れ落ちる水が流れていった。 背を向ける中村。セクシーポーズを取って口を開く。 「立派だと言っておこう、敵と書いて友よ。貴様の記憶は俺に刻まれた」 さらば、岩田、さらば岩田。そして……永遠に。
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