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リターントゥガンパレード
第19回 SIDE−B “メッセンジャー” /*/
猫は、手紙をくわえて走り続ける。
その猫は、三毛猫だった。猫の王から密書をわたされて、旅をしているのだった。
走る、走る、草原を走る。
走る、走る、月面を走る。 /*/
時は、飛ぶ。2週間ほど前になる。
その昔、物置だったその小屋には、今、かまぼこ板からなる小さな表札がかけられていた。
こんなに暗い夜でも、その表札の文字の一部は、読むことが出来た。
“正義最後の砦 事務所”
昼間は善行が座る隊長室の椅子に、善き神々の長老たるブータ猫が鎮座した。
夜の間、そこはブータの定位置であった。
ひっきりなしに猫が出入りし、鳥神族が得た航空偵察の結果を書き加えていく。
同じく加藤が座る席で軍専用回線電話を使う犬神。
小屋の外では巨大な神木が枝を広げ、この小屋を守ろうとしていた。
その足元では様々な虫から選抜された楽団が、高らかにすこぶる景気のいいマーチを鳴らしだした。
“空を見上げよ その名を高らかにしらしめよ 我らが奉じる大旗の御名を”
「それは我らの胸の中」
兎はそれでなにもかもに満足すると、神々が滅ぶ最後の、楽しい楽しい戦いを勇敢に演じることにした。 /*/
ブータは朱肉に肉球を押し付けると、白い紙にぺたんと肉球を押した。
仔猫の気分が抜けきれていない猫神族の一柱が、それを空中でキャッチした。
ブータが肉球を紙に押し付けるたびに、猫神族が四方八方に散っていった。
「援軍は、来るでしょうか」
不安そうな子猫の顔にブータは、晴れやかに笑った。言葉を続ける。
「だがまあ、ハードボイルドペンギンだけでも来るだろうよ。世界の最後の日でも自分のやることをやるペンギンだ」 /*/
こうして、猫は、手紙をくわえて走り続ける。 |
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